OVER VIEW

<OVER VIEW>未曾有の不況下、国内IT企業 02年3月期決算総覧 Chapter4

2002/07/22 16:18

週刊BCN 2002年07月22日vol.950掲載

 

ハード販売ベースのソリューションプロバイダ

 ハードの激しい価格破壊が進むなか、ソリューション提供のプロバイダ決算も明暗を分けている。富士通ビジネスシステムの売上高は、前年比11%減り、一方18%も伸びた日本ビジネスコンピュータはIBMサーバーの伸びが大きく貢献した。利益率でみると独立系のオービックが他社を圧倒し、サンの国内最大手販社伊藤忠テクノサイエンスがこれに続く。大塚商会は2%の売上減少であったが、営業利益は大きく伸びた。オフィス関連兼業内田洋行の情報関連事業売上高は7.1%増と堅調に推移した。

■経営指標格差大きい大手ソリューションプロバイダ

 (社)情報サービス産業協会(JISA)は、00年度国内情報サービス産業売上高は前年比5.6%増の10兆7228億円、GDPに占める割合は2.09%と初めて2%を突破したと発表した。

 ガートナーは01年以降国内ITサービス市場は05年まで平均7.7%で伸びると予想している。いずれにせよ、パソコン、ストレージ、サーバーなどの価格破壊が激しいなか、IT市場の伸びを牽引するのはITサービスであり、このためソリューションプロバイダ(SP)の役割は大きくなると期待されている。

 ハード販売をベースとするわが国大手メーカー系列SPでは日本ビジネスコンピューター(JBCC)が18.4%、独立系では伊藤忠テクノサイエンス(CTC)が14.0%と大きく伸びた。

 一方、大塚商会は2.0%の減少にとどまったが、富士通ビジネスシステム(FJB)は10.8%と2ケタの減収となった(Figure19、20)。

 大手のなかでは内田洋行はオフィス関連事業が43.7%、教育関連が24.9%で、情報関連が29.3%、520億円の売上高であった。

 大手SPの売上高伸長は明暗を分けたが、すべてのSPがハードの出荷台数減と価格デフレの被害をソリューション開発事業で補っている状況だ。

 大手ITメーカー02年3月期決算でもソフト、ITサービスの売上高は大きく伸びている。富士通のノンハード売上高は3.5%増であったが、日立製作所は16.4%増、NECは19.6%増であった(Figure6)。

 しかし、大手SPの経営指標には大きな格差が生じている。総利益率ではオービックが45.1%と例年通り圧倒的に高く、これに内田洋行25.3%、大塚商会23.4%、CTC19.2%、JBCC18.3%と続き、FJBはわずか14.5%である(Figure21)。

 売上高に占める販管費率にも総利益率ほどではないが大きな格差がある。20%以上は内田洋行23.2%、オービック21.4%、大塚商会20.9%である。10%台はJBCCが14.6%で、CTCとFJBは12.9%であった。

 この結果、売上高営業利益率にも大きな格差が出た。営業利益率ではオービックが23.7%と他社を圧倒し、これにCTC6.3%、JBCC3.7%が続く。大塚商会と内田洋行は2%台で、総利益率の低いFJB営業利益率は1.6%と低迷する。

 ハード販売とは異なり、ソリューションビジネスでは豊富なSE陣容も要求されるので、ボックスセラーの米デルのような低い総利益率、販管費率では市場要求に応えられない。

■売掛金、たな卸資産にも大きな格差

 SP経営にとっては損益計算書だけでなく、貸借対照表からも重要な指標が読みとれる。とくに価格破壊が激しいなかでは、製品在庫を大量に抱えることは危険である。

 高い仕入れ原価商品を販売する時点では、価格が逆ザヤにとることも十分想定されるからだ。また受取手形・売掛金の膨張は一般的に売上不足を補うための期末の押し込み販売、あるいはシステムなどの完成前に当該受注案件の全額売上計上を意味することが多いからだ。

 このため一般的傾向として、経営が安定し利益率も高い企業の売掛金は小さい。期末たな卸資産の売上高比(月数)でみると、CTCが0.86、FJB0.72、JBCC0.60、大塚商会0.59、オービック0.35である。

 この在庫指数はハード販売比率の高い方が大きいとも指摘できるが、当指数が0.8か月以下はほぼ健全といえよう。

 パソコンなど値崩れが激しい商品ではこれまで、メーカーが販社在庫品の逆ザヤ補填も行ってきたが、メーカー経営が厳しくなったので、NECなどもこの補填を打ち切った。

 一方、売上計上基準の健全性を示す受取手形・売掛金の売上高比(月数)には大きな格差が生じている。当指数は大塚商会1.68、オービック1.84であるがJBCC2.82、FJB3.10、CTC3.24と高くなっている。

 大塚商会は社内売上計上基準が遵守され、CTCなどは大型システム案件比重が大きいので、売掛金も膨らむと考えられる。

■オービック、全セグメントで高い利益率

 売上高減少の大きかったFJBセグメント情報は、ハード価格の大幅下落もあった情報システム売上高が前年比21.2%も減ったことを示す(Figure22)。

 これは親会社富士通も同様で、同社パソコン売上高は20.7%も減少している。一方コンサルティングを含むソフトサービスは14.3%と大きく伸びている。

 FJBは、02年経営方針で当部門売上高の伸びを支えるためのアウトソーシング受注増に邁進すると述べている。また売上減となった保守サービスもサービスビジネスへのパワーシフトを推進するとFJBは述べる。

 大塚商会セグメント情報は同社売上高の70.3%がシステムインテグレーション、29.4%がサービス&サポートであることを示す(Figure23)。

 同社営業利益率でもシステムインテグレーションは2.2%であるが、サービス&サポートは7.9%と高い。同社売上高でハード販売を含むシステムインテグレーションは前年4.7%減であったが、サービス&サポートは5.2%伸びている。

 インテグレーションで同社はオリジナルERP「SMILE」の機能強化と、ナレッジマネジメントオフィスのためのドキュメントソリューション「ODS」の発展にも力を入れると述べる。また、サービス&サポートではネットを利用した「Webラーニング」教育事業と、ウェブを活用したオフィスサプライ販売「たのめーる」も順調に伸びている。

 オービックの2つの主力事業営業利益率はシステムインテグレーションが23.0%、システムサポート37.9%ときわめて高く、SP他社を圧倒する。前年比売上高伸長ではシステムインテグレーションは3.2%増であったが、システムサポートは11.9%も伸び、同社売上高伸長を支えた(Figure24)。

 CTCでは主力事業のシステム事業売上高は前年比13.1%増、サポート事業は23.1%増となった。売上高が前年18.4%増のJBCCではコンピュータ機器販売のシステム事業でIBMのUNIXサーバーとiSeriesが柱となり前年比33.5%増と大きく伸びている。(中野英嗣)
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