大阪電気通信大学副理事長 水野博之

 またバイクの話だ。どうもここのところ、バイクにうなされている。夢にまで出てくる。ベトナムのドライバーには断固たる特徴が2つある。1つは皆、野球帽をかぶっている、ということだ。幼児まで生意気に野球帽をかぶって両親に抱かれて走っている。家内が感心して曰く。「あんなときからのっけられて走っているから、平衡感覚が育つのだわ」

 ベトナム人の器用さがどこから来るのかよく分からんけど、私も家内もあの飛燕のようなバイクからは直ちに転がり落ちることだけは間違いないだろう。この申し合わせたような野球帽スタイルにあきれて、通訳の女性に「ヘルメットはかぶらないのか」と質問をしたところ、法律ではヘルメットをかぶることになっているのだそうだ。

 ところがこの暑さだ。ヘルメットでもかぶろうものなら、頭の中は灼熱地獄となる。フーッとなって流石百戦錬磨のベトナムドライバーたちもモウロウとして仕事にならない。誰もやらなくなった。野球帽に限る。かくして、法律は現存するのだが、誰もヘルメットを着用する人はいない。

 聞いてみて「ヘーッ」と思った。「ヘーッ」の意味は2つあって、1つは、どこの国でも役人の考えることは同じようなものだ、ということだ。実情も何も考えずに、他国の例をもとに得々と法律をつくる。悪意はないのだろうが、法律をつくることが仕事となると、国民のことはお構いなしだ。いくらつくった、ということが実績となると恐ろしい。

 2つには、この社会主義国家には「悪い法律」は守らなくてもよい、という基本があるということだ。どこかの国のように、自らの権力のために法はひとたび決めれば断固として守らせるというところがないということだ。あくまでも国民が選ぶ権利をもつということだ。かつてのスターリンの時代とは全く違う。(レックスホテルにて)