この連載も残すところ3回となった。今号を含め、中小企業のIT投資について、もう一度、原点に戻って考えてみたい。ITの製品・サービスを販売する読者の方に、何らかのヒントになれば幸いである。

 「OA化とIT化は違う」とよく言われる。要はどちらもコンピュータ化なのだが、前者は業務の生産性向上に主眼があり、後者はビジネス全体の最適化や強化を目標にしている。

 そのためITブームの頃は、フロントオフィス分野に向けた提案が盛んだった。グループウエアやSFA(営業支援システム)、CRM(顧客情報管理)の導入による営業、マネジメント強化が謡われた。実際、大企業はこぞって導入した。

 当然、次は中小企業市場だと誰もが考え、製品・サービスの投入が相次いだ。だが、その多くは成功していない。予算が小さい中小企業は、「不確実性」が伴う分野への投資に消極的だったからだ。

 IT化による営業、マネジメント強化は、「現実にどれだけのリターンがあるのか」と見られがちだ。特に、この不況で経営者は積極的になれない。

 ITブームが去った現在、立ち返るべきは、実はOA化の視点ではないだろうか。あるソフトベンダー幹部は、「中小企業向けのIT化提案には段階がある。まず業務の効率化でコストを削減、その削減コストを原資に次の投資を促す」と話す。

 その流れはこうだ。仮にコンピュータ化で業務の生産性が上がり、月20万円のコスト削減効果があったとする。その20万円をリース料金に充てると、1000万円程度のIT投資が可能だ。営業やマネジメント強化のIT投資を呼び込みやすい。原資が担保されているならば、経営者も投資に前向きになるだろう。

 定型作業の業務は工数の積み重ねで、コンピュータ化によるコスト削減が見えやすい。これが営業やマネジメントとの違いだ。すでにコンピュータを導入している場合でも、コスト削減の余地はある。例えば、本社と支店を結んだ業務処理にインターネットを利用すれば、通信費用を削減できる。

 中小企業にIT化を提案する場合は、まず業務のコスト削減から入るべきではないだろうか。