中国ソフト産業のいま

<中国ソフト産業のいま>14.第2の国内マーケット

2003/04/07 20:43

週刊BCN 2003年04月07日vol.985掲載

 国内ソフト会社の多くは、否応なしに“中国”との関係が深まる。これが前号の要旨である。理由の1つとして、ソフト会社の顧客企業がどんどんと中国に進出している点が挙げられる。例えば、1996年から上海に進出しているCSKの場合、「顧客1000社が中国に進出、200社が何らかの対中投資を実施している」(上野真・大和総研シニアアナリストの調査)と言う。(坂口正憲)

 顧客1000社に対応する開発・販売拠点となれば、大阪、名古屋など主要拠点に劣らない位置づけになる。実際、CSKは中国で100人近いエンジニアを擁し、07年には1000人体制に拡大する計画である。大手SI(システムインテグレーション)ベンダーになると、中国に進出する顧客の数も膨大で、中国でのサポートを求められるケースが急増している。そのため02年には、野村総合研究所、新日鉄ソリューションズ、TIS、電通国際情報サービスなどが、相次ぎ現地法人を設立している。今や中国で展開する日系企業の数は2万社を超える。しかも、複数の拠点を広域展開する企業は珍しくない。

 さらに、中国拠点での現地調達の比率が高まっており、グローバル・サプライチェーンのなかで重要な役割を果たすケースが増えている。松下電器産業は、中国で展開する60もの工場・事業所にSAP「R/3」を導入し、業務を管理する。それだけ高度な情報システムの導入が求められている。要は、ソフト会社にとって中国が第2の国内マーケットとなりつつあるということだ。「顧客の中国拠点を国内と同等にサポートできないベンダーは相手にされなくなる」(大手コンピュータメーカー幹部)と見る向きもある。

 顧客企業が中国と日本の垣根を取り除きつつあるなかで、顧客本位であるべきサービス業のソフト会社が垣根を意識している場合ではないだろう。これは大企業と大手ベンダーだけの話ではない。最近では、中堅・中小企業の中でも果敢に中国進出を果たし、思い切って生産や業務を中国中心に移し変える例も目立つ。中小ソフト会社の場合、こうした日系企業のニーズに対応するところから、中国との関係性が始まっていくのではないだろうか。
  • 1