中国ソフト産業のいま

<中国ソフト産業のいま>20.アジア意識する国内ベンチャー

2003/05/26 20:43

週刊BCN 2003年05月26日vol.991掲載

 前号ではSARSの問題を取り上げたが、今号からは再度、中国と関わりながら事業を伸ばす日本の中小ソフト会社を紹介していきたい。特に、中小ソフト会社の中でもここ数年のうちに設立されたベンチャー系の多くで、その事業戦略に中国が深く関わっている。2000年のITバブル崩壊と前後して、国内のソフト産業が構造的に変化したことを示す。(坂口正憲)

 そうしたベンチャー系ソフト会社のなかで異彩を放っているのがイーシー・ワンだ。98年4月の設立で、Javaベースのウェブシステムや業務ソフト部品「EJB」の開発に特化している。独自の開発フレームワークにより、EJBの標準化を狙うプロジェクト「c Bank」も展開する。cBankには、日本アイ・ビー・エム(日本IBM)や日立ソフトウェアエンジニアリングなど大手ベンダーが数多く参加。ベンチャーながら、Java分野での存在感は大きい。

 そのイーシー・ワンは、アジア進出に熱心である。02年には中国に現地法人「イーシー・ワン・チャイナ」を設立。北京・中関村、上海と立て続けに拠点を設けた。技術者が豊富な中国で、Javaエンジニアを積極採用する(現在40人以上)。日本でのJavaベースによる大規模開発の増加に伴う技術者ひっ迫に備える。

 一方で、中国の国内マーケットに注目する。今後は中国のユーザー企業でも、業務システムの導入需要が膨らむ。その場合、Java/EJBは有力な基本技術となる。日本の先進的な業務ロジックを内包したEJBを中国に流通させ、3年後に12億円の売上高を目論む。イーシー・ワンは03年春、韓国との関わりが深い日本のIT関連企業2社と組んで、韓国市場開拓に向けた取り組みも始めた。国境の壁を越えたアジア展開を急ピッチで進める。

 本来、IT業界はグローバルな産業である。特にJavaやウィンドウズなど標準技術が広く普及している現在、日本のソフト会社がアジア市場で勝負できる可能性が出てきた。業界の因習に囚われる必要のないベンチャーからすれば、海外に打って出るのは当然の成り行きかもしれない。今後、リソースとマーケットの両面にらみで進出するベンチャーが増えてくるだろう。
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