前回はハードウェアの修繕、保守について説明したが、今回はソフトウェアの修繕、改修、保守の支出と税務およびIT投資減税の適用について検討してみよう。ソフトにおいては、修繕と資本的支出についての基本通達がある。(日本パーソナルコンピュータソフトウェア協会(JPSA) 税務委員会委員長 税理士 根岸邦彦(監修))

 基本通達の「ソフトウェアにかかわる資本的支出と修繕費7-8-6の2」には、「法人がその有するソフトウェアにつき、プログラムの修正等を行った場合において、当該修正等がプログラムの機能上の障害除去、現状の効用維持等に該当するときは、その修正等に要した費用は修繕費に該当し、新たな機能の追加、向上等に該当するときはその修正等に要した費用は資本的支出に該当することに留意する。(注)既に有しているソフトウェア、購入したパッケージソフトウェア等の仕様を大幅に変更して、新たなソフトウェアを製作するための費用は、原則として取得価額となる」とある。

 このように、「機能上の障害除去、現状の効用維持等」は修繕であり、「新たな機能の追加、機能の向上等」は資本的支出であるという、おおまかな枠組みが税務では既に存在している。

 新規ソフトのみが減税の対象になるとすると、既存のシステムであっても、「既に有しているソフトウェア、購入したパッケージソフトウェア等の仕様を大幅に変更して、新たなソフトウェアを製作する」ことは、(新たな)取得価額になると考えられ、減税に適用される可能性があることになる。

 たとえば、次に挙げる5つのケースを考えてみよう。

 (1)プログラムに不具合が発生したため、ソースプログラムを修正し、再コンパイルして新しいオブジェクトと取り替えた、(2)既存の帳票に前年対比の比率を表示するために、プログラムを修正して既存のものと入れ替えた、(3)プログラムを新しく製作し、既存のメニューに組み込んで利用できるようにした、(4)パッケージで利用しているグループウェアに、新たに「仮払精算」などの機能を加えた製品が発売されたので、それを導入した、(5)パッケージと作り込みで販売管理と財務会計を導入しているERPに、一部カスタマイズも行って新たな販売管理システムを導入した。――

 上記の5つの例は、すべて「新規のシステム」ではないにもかかわらず、「新規の取得価額」といえる可能性のあるものがある。まず、「修繕費」と「資本的支出」の区分を先の通達に従いながら考える。

 その結果、(1)は機能上の障害除去、(2)(3)は現状の効用維持、(4)(5)はすでに有しているソフトウェア、購入したパッケージソフトなどの仕様を大幅に変更して、新たなソフトウェアを製作するための費用に区分することができる。そうなると、(1)は修繕費、(2)(3)は資本的支出として、既存のソフトウェアの価額に加算する支出、(4)(5)は新規のソフトの取得と考えて会計処理をすることになる。

 杓子定規にIT投資減税への適用を考えてみると、減税の対象となるソフトウェアの定義「プログラムであり、事業の用に供したことがない」ということを踏まえると、(1)も「コンパイルした新しいオブジェクトプログラムは、これまで事業の用に供したことがない」と、理屈をつけることができる。しかし、これは元のソースプログラムは、ほんの一部を除いて古いままである。(2)の場合もおおむね、ソースコードは変わらないといえる。

 というわけで、この問題は上記の通達に基づく区分により「常識的」に考えて、(4)(5)だけが既存ソフトウェアに関連しているものの、IT投資減税の対象になると考えられる。