住民基本台帳ネットワークシステム(住基ネット)が8月25日から本格稼動し、ICカード機能をもった住基カードの交付も始まった。初日には、片山虎之助総務大臣(岡山県選出)が東京都文京区役所に出向き、新しく始まった住民票の広域交付制度を利用して地元にある住民票を引き出すデモンストレーションを公開。各市町村の窓口でも大きな混乱はなく、順調なスタートを切った。(ジャーナリスト 千葉利宏)

順調なスタートを切る

 「電子政府・電子自治体の基礎の基礎がようやく本格的に動き出した。引き続き公的個人認証などの基盤整備を進めていきたい」――。総務省自治行政局市町村課の馬返秀明理事官は、住基ネットの順調な滑り出しにホッとした表情を浮かべた。初日の夕方に行われた総務省の記者会見でも、サービス開始直後の約1時間は予想以上に処理が集中してサーバーにつながりにくくなったが、「現時点では順調に稼動」との状況が報告された。

 住基ネットを巡っては、今回も東京都杉並区、同国立市、福島県矢祭町の3団体が住基ネットへの接続を見送るなど混乱は続いている。しかし、1年前の8月5日の第1次稼動時に比べると、新聞、テレビなどの論調も冷静に内容を分析しているものが多く、住基ネットがIT社会のインフラとして着実に認知されてきたとの印象だ。残念ながら、住基ネットに公的個人認証を含めて全体像を解説している記事はまだ少ないが、IT先進自治体の首長はその重要性を前向きに評価している。

 7月末に開催された日本経済新聞社主催の第3回電子政府戦略会議で、住基ネットに対するコメントを求められた4人の首長から否定的な意見は全く出なかった。「何で問題になっているのか理解できない」と前置きして、岐阜県の梶原拓知事は、住基ネットの本人確認機能が「情報民主主義のベースになる」ことを強調。実際に住基ネットサービスを提供する千葉県市川市の千葉光行市長からは、情報セキュリティの国際認証規格の取得に向けた取り組みが紹介され、和歌山県の木村良樹知事も「住基ネットの役割を前向きにとらえながら、セキュリティを考えるべき」と指摘した。

 住基ネットの本格稼動では、住民票の広域交付に加えて、希望者に対する住基カードの交付が大きな目玉だ。筆者も早速、住基カードを申し込んできた。運転免許証、パスポート、フリーであるため会社の社員証の類ももっておらず、公的証明書と言えば健康保険証だけ。写真付きの公的証明書が全くないために何かと不便な思いをしていたからだ。近くの区役所の窓口で、申請書を受け取り、氏名、住所、電話番号などを書き込み、写真付き希望なので、持参した証明書写真を添付して提出。健康保険証を提示し、本人確認のための質疑応答10問ぐらいを行って、手続きは10分ぐらいで終了。後日、自宅に書類が送付され、それを持参して区役所の窓口で住基カードを受け取る予定だ。

 筆者が住む市では、住基カードを使ったサービスは、まだスタートしておらず、住基カードをもつメリットを感じている人は少ないかもしれない。区役所の窓口で聞くと、初日の申し込みは「20人ぐらいだった」とか。総務省では一定期間を過ぎた段階で、申し込み状況を調べることも検討しているが、自治体によるサービスの導入状況で発行枚数は大きく違ってくると予想される。しかし、今年秋から順次実証実験が始まる公的個人認証システムの暗号鍵を格納する媒体として、住基カードが有力候補の1つであるのは間違いないところ。今後は住基カードを使ったサービスの導入・拡大に加えて、公的個人認証サービスの導入とそれを利用したサービスをどのように広げていくかが、住基カード普及のカギを握っている。