中国ソフト産業のいま

<中国ソフト産業のいま>42.“外注失敗”の原因はどこに?

2003/11/03 20:43

週刊BCN 2003年11月03日vol.1013掲載

 今週からはソフト開発のアウトソーシングについて検討していきたい。ちょうどNECソフトが中間決算の発表で、中国企業への外注が失敗したことにより、2003年度通期では20億円の損失が出るとの見通しを発表したばかり。業界内からは「やはり中国へのアウトソーシングはリスクが高い」との声が聞こえる。では、NECソフトの件を見ていきたい。報道によれば、中国企業へ外注していたのはJavaベースの販売・物流システムで、20億円という損失額からもかなり大規模だったことが分かる。(坂口正憲)

 中国企業から納品されたプログラムをテストしたところ、極端なパフォーマンス不足が発覚。NECソフトが自ら作り直す始末になったという。その結果、03年末の顧客納入予定が大幅に遅れる。損失額には、納期遅れの違約金や作り直しのコストが含まれるもようだ。この失敗は、本当に「中国へのアウトソーシング」だったのか疑問がある。まず、Javaベースのシステム(ウェブアプリケーション)の場合、パフォーマンス不足はよく発生することだ。プログラムコード中にボトルネックがあると、性能が極端に落ちる。

 そのためウェブアプリケーション開発では、コードを書き上げた部品ごとに負荷テストなどを実施するのが理想とされる。最終的に部品を全部組み上げた後では、どこにボトルネックが存在するのか分からず、一から見直さなければならないからだ。「ウェブアプリケーション開発の失敗の多くはテスト不足が原因。特に短納期のプロジェクトの場合、仕上げることに精一杯で、開発過程でのテストがおろそかになる傾向がある」(検証ツールベンダー関係者)。

 NECソフトのプロジェクトもかなりタイトなスケジュールだったと聞く。日本側の検証体制は不明だが、最初から作り直す始末になった点を見ると、検証体制が不十分だったように思える。しかも報道によれば、「開発フレームワークが整わないまま外注してしまう」という点も影響したようだ。簡単に言えば、プロジェクトマネジメントがしっかり機能していなかったということになる。
  • 1