WORLD TREND WATCH

<WORLD TREND WATCH>第186回 サンがAMDと提携した背景

2004/01/19 16:04

週刊BCN 2004年01月19日vol.1023掲載

 2003年11月、サン・マイクロシステムズが64ビットMPUでAMDと提携し、これまで低価格Linuxサーバーではインテルチップを採用してきたサンの変身にIT業界は驚いた。サンのAMDの64ビットOpteronサーバーでは、自社OSの「Solaris(ソラリス)」とLinuxを搭載する。UNIXサーバー最大手サンの本命は、自社開発64ビットプロセッサ「Sparc(スパーク)」と自社ソラリスで構成される。

サン市場を狙うインテルの策謀

 低価格インテルサーバーは、サンの本命市場ではない低価格Linuxの品揃えのためであった。サンはプロセッサとOSを自社開発する垂直統合ベンダーであるので、本命64ビット市場では自社開発製品を頑なに維持してきた。このサンが64ビットでAMDと提携した背景には特別な事情がありそうだと、サンとAMD提携発表時に米ITアナリストたちは探り始めた。探索の結果、インテルがサンのスパーク市場に狙いを定めた同社の「ザ・インテルItanium2ソリューション・チャレンジ(TIISC)」というプロジェクトがあることが判明した。

 インテルは64ビットが今後サーバーの主流になると見込み、早々とItaniumを発売した。しかし、この初期版の評価は低く、このためその後継Itanium2の市場投入を急いだが、当チップ出荷も03年に10万個程度で、インテルの期待には届かなかった。このためインテルは、既に64ビット市場を形成しているサンSolarisのリプレースを狙うためTIISCプロジェクトに着手した。当プロジェクトはItanium2サーバーをサン64ビットユーザーへ3か月間無償で貸し出し、その評価をユーザー自らが行う試みだ。この無償サーバーはインテルが直接ユーザーに提供するのではない。IBM、ヒューレット・パッカード(HP)、ユニシスを中心とするサン競合のサーバーベンダーが、自社サービスを含めて提供する仕組みとなっている。

 インテルは当プロジェクトの狙いがサンユーザーであるとは公言していない。しかしサンを除く有力サーバーベンダーをプロジェクト協業者にしたことで、そのターゲットは自明だ。さらにインテルは64ビットソフトウェア強化のため、BEAシステムズ、i2テクノロジーズ、マイクロソフト、オラクル、SAPなどISV(独立系ソフトベンダー)にも無償でItanium2サーバーを多数提供し始めた。IBMなどは自社パートナーへもインテルサーバーを貸し出し、パートナーはリプレースを狙うユーザーへ提供し始めた。

 あるIBMパートナーの幹部はインテルプロジェクトを「買う前に試めすことができるので、効果は大きい」と期待を語る。サンはこのインテル戦略を自社Sparcより安いOpteronサーバーで阻止する。しかし、インテル協業者となったIBMも一方で、サン市場リプレースが期待通りに進まなかった場合、インテルがその狙いをIBMパワーサーバーにシフトすることにも警戒を強めているようだ。(中野英嗣●文)

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