企業のIT調達モデルを変える デルの挑戦と死角

<企業のIT調達モデルを変える デルの挑戦と死角>6.パソコン標準化の時代へ

2004/02/09 20:43

週刊BCN 2004年02月09日vol.1026掲載

 前号では、デルのCFI(カスタム・ファクトリ・インテグレーション)サービスはサプライチェーンにユーザーを組み込む作用があり、その背景には、企業が購入するパソコンの機種を最低限に絞る、「標準化」の動きが目立ってきていると述べた。その標準化の動きについて、もう少し詳しく見てみよう。最近の事例では、NTTコミュニケーションズ(NTTコム)が1万5000台にも及ぶ社内のパソコンをデスクトップ1機種、ノート2機種に標準化したことが話題を呼んでいる(ベンダー名は非公開)。(坂口正憲(ジャーナリスト))

 NTTコムはパソコンの標準化にともない、セキュリティ管理や資産管理も集中化し、それまで1台で年間48万円もかかっていたパソコンの管理コストを30%削減して33万円にした(スタッフ部門での実績)。最終的には15万円まで引き下げるとしており、これにより年間50億円のコスト削減になる。NTTコムの社内には従来、部署ごとに実にさまざまな仕様、OSのパソコンが混在しており、それが管理コストの増大を招いていた。それを標準化するとともに、完全な集中管理体制を敷き、管理コストを引き下げた。

 標準化を可能にする要素の1つは、パソコンの価格性能比が極端に上がったことで、業務の特性に応じて買い分ける必然性がなくなったことだろう。ある外資系企業の購買担当者は、「これまでは、業務向け、技術向け、営業向けと機種を分けて購入していた。しかし今の製品は、あらゆる業務に適応する基本性能を持ちながら、価格が安い。あれこれと選ぶよりも機種を絞って購入した方が管理は楽」と話す。

 つまり、価格が極限まで下がりながら、CPU性能が向上していくパソコンは、企業内で標準化していく流れにある。従来ならデスクトップは安い外資系製品、ノートは薄型技術を得意とする国産品という区別もあったが、それも外資系の製品開発の追い上げで崩れている。

 極端に言えば、企業はベンダー1社からデスクトップ、ノートをそれぞれ1機種ずつ購入すれば済む。製品トレンドに大きな揺れがない法人分野では、強いベンダーがより強くなる構図である。こうした流れのなかで、最も勢力を伸ばせるのはどこだろう。最右翼にいるのはデルに違いない。
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