企業のIT調達モデルを変える デルの挑戦と死角

<企業のIT調達モデルを変える デルの挑戦と死角>11.IT基盤の変化がデル後押し

2004/03/15 20:43

週刊BCN 2004年03月15日vol.1031掲載

 今号からデル日本法人のサーバービジネスの可能性を検証していきたい。調査会社によって若干の違いはあるが、2003年上半期、デルはパソコンサーバー市場で17%前後のシェアを得て、富士通に並んだようだ。法人向けパソコンを上回るペースで価格が下がり、コモディティ化しているパソコンサーバーは、デルにとって完全にパソコンビジネスの延長線である。その証拠に米デルは03年夏、大型サーバー市場からの撤退を発表している。ここでいう大型とは、1台に最大8個のCPUを搭載する8ウェイサーバー。米デルは今後、小・中型の1/2/4ウェイサーバーに注力していく。(坂口正憲(ジャーナリスト))

 普通に考えれば、エンタープライズ市場で存在感を増している米デルなら、IBMやヒューレット・パッカード(HP)、サン・マイクロシステムズが強みを持つ大型サーバー分野は魅力なはずである。だが、ITインフラのトレンドは、大型サーバーで集中的にデータ処理する「スケールアップ」型から、小・中型サーバーを束ねて並列的に処理する「スケールアウト」型に向かっている。米デルのハイエンド撤退は、そのトレンドに合わせたものだ。世界で第4位の処理性能を持つ“スーパーコンピュータ”は、米国立スーパーコンピュータ応用研究所がデルの2ウェイ・ブレードサーバー約1500台で構築したものだ。スケールアウト型の拡張性と可用性を示す。

 そして国内でも、スケールアウト手法を使う企業が増えてきた。例えば、ネット証券のイー・トレード証券はシステム更新にあたり、1台数千万円していた大型サーバーを捨て、数十万円の小・中型サーバーを数多く束ね、処理性能を高めた。ハードのコストは数十分の1になった。新システムでは、仮に1台に障害が発生しても、データ処理はその他多くのマシンに受け継がれる。障害マシンをシステムから切り離し、代替機を差し込んだ後で、障害マシンを直せばよいし、もし直らなくても数十万円なら惜しくもない。これが大型サーバーなら、メーカーの保守要員を即座に呼びつけ、1分でも早く復旧しなければ売買取引が止まってしまう。ごく少数の大型サーバーに処理を委ねるのはリスクも高いのだ。スケールアウト型が広まれば、デルに追い風が吹くだろう。
  • 1