視点

個人情報漏洩 底知れぬ不安

2004/03/22 16:41

週刊BCN 2004年03月22日vol.1032掲載

 ヤフーBB加入者450万人の個人情報が流出した。だれがどのようにして持ち出したのか、社内に関係者はいるのか、ヤフーBBは単なる被害者なのか、全容はまだ解明されていないが、前代未聞の大量流出である。ヤフーBBは事件後、情報が漏れた加入者すべてにおわびとして金券500円を配る方針を明らかにする一方、2次被害を防ぐため、ヤフーBBのメールアドレス変更を無料で受け付けることも決めた。この事件に対する若者の反応は、「他の流出事件に比べ500円では安すぎる」というものと「500円もらえるならヤフーBBに入っておけばよかった」というものだった、とある私大教授が語っていたが、若者のみならず個人情報流出に対する危機意識はまだまだ低い。

 私の個人情報も流出しているとヤフーBBから連絡があった。住所、氏名、電話番号、連絡用メールアドレス、ヤフーBBメールアドレス、登録日が流出しているそうだ。最近、連絡用アドレスにSPAMが急増した。このアドレスは10年前から利用してきたメインのアドレスであり、いままで注意深く扱ってきたから、ほとんどSPAMは来なかった。それが急増したのは、ヤフーBBの情報漏洩(ろうえい)と関係があるのではないか、と疑ってはみたが、因果関係を証明する手段がない。下手に送信先に確かめようものなら、アドレスの実在を相手に知らせるようなものだから、かえって危うい。アドレスを変更すればいいのだが、変更する手間ひまが馬鹿にならない。変更通知を受けた人にも手間をかける。これらの手間ひまが500円で償えるのだろうか。

 問題はコストばかりではない。個人情報がどういう人物に渡っているか、分からないところに底知れぬ不安がある。この不安も利用者には具体的には実証できない。事前の防衛策もとりにくい。流出した個人情報をもとに、架空請求メールを送りつけ、まんまと数千万円を詐取する事件も起きている。手口は毎年巧妙になり、身に覚えのない人も引っかかる恐れがある。現在、表面化している危機はそれほど大きくはないが、漏洩(ろうえい)した個人情報は勝手に流通する。それが他のデータとマッチングされたら、どういう危険に発達するか、不安は増すばかりである。この不安を解消する何らかの手だてが必要ではないか。
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