WORLD TREND WATCH

<WORLD TREND WATCH>第196回 垂直統合ベンダーの活路

2004/03/29 16:04

週刊BCN 2004年03月29日vol.1033掲載

 世界的にIT先進ユーザーは、新しいプロセッサなど基盤技術から生まれる新商品によるITインフラ拡充投資には極めて慎重になった。ユーザーはそれよりも、安くて管理の手間がかからず、管理コストの安いソリューションを求めるようになった。このようなIT市場需要変化に対応して、垂直統合型ベンダーは自社の総合力を誇示し、他社との差別化を目指し、ハード統合バンドル商品の開発を急ぎ始めた。2003年11月には日立製作所が世界初の、サーバー、ストレージ、ネットワーク機器を1筐体内に収納できる「エンタープライズブレード(EB)システム」を発表。

ハード統合バンドル急ぐ

 これに続いてIBMはサーバー、ディスクストレージ、テープドライブ、Tivoli(チボリ)などを統合したハード、ソフトのバンドルシステム「IBMトータル・ストレージ・データ・リテンション450(TSDR)」を04年2月に発表した。日立EBシステムは同社の新しいIT環境コンセプト「ハーモニアスコンピューティング」を実現する商品だ。一方IBMのTSDRはIBMオンデマンドコンピューティング環境を支える顧客データの保存・維持を狙った商品だ。日立は自社が訴えるITの仮想化と、システムの自動運用をサポートする商品としてEBシステムを位置付け、システムの自律化で顧客がコアビジネスに集中できるようになることを強調する。

 IBM商品はブレード型ではなくラック型であるが、ラック内にUNIXサーバーの「pSeries」2台、ファストストレージアレイ、チボリストレージマネジメントが収められている。2台のサーバーのうち1台はバックアップを狙ってノンストップ型を実現する。さらにストレージではサン・マイクロシステムズSolaris(ソラリス)、ウィンドウズ、HP-UX、これにIBMのAIX、メインフレームOS用などをSP(ソリューションプロバイダ)が自由に付加できる。さらに顧客需要に応じて光ディスク、テープドライブなども接続できる。IT市場のパソコン、IAサーバーは部品を専業ベンダーから調達し、最終商品を組み立てる水平分散型製品で、ハードベンダーは価格デフレで利益が出しにくくなっている状況が続く。この水平分散市場ではデルのように、業界全体の伸びより、はるかに高い出荷台数伸長によって「デフレ抗体」を社内に定着させる以外に利益を出せる方策はなくなった。

 このため垂直統合ベンダー及びこれらのセールスパートナーは、自ら付加価値を求められる統合型バンドルシステムに活路を見い出さなければならない。これら統合型システムは単純に他社製品を組み合わせて作ることは難しい。バンドルされる製品間の整合性が強く求められ、当面は擦り合わせ技術に優れた垂直統合ベンダーの市場となる。フォレスターリサーチのトム・ポールマン氏は、「顧客がIT利用環境整備に積極投資を始めたことは、IBMなど垂直統合ベンダーの追い風となる。統合バンドルシステムはハード群だけでなく、管理用ミドルウェアも自社開発できるベンダーに限定されるからだ」と分析する。(中野英嗣●文)

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