米国流通最前線を行く

<米国流通最前線を行く>第7回 ラジオ・シャック 家電販売の“コンビニ”

2004/03/29 20:42

週刊BCN 2004年03月29日vol.1033掲載

 ラジオ・シャックはアメリカ国内にとどまらず、諸外国にも展開しており、まさに家電販売のコンビニエンスストアといえる。かつて日本の家電店がもっていた地域密着型というスタイルを最大の美点とする同社の戦略は、大手一辺倒になってしまった日本の家電流通業界にとっては、意外な成功事例と映るのではないだろうか。フランチャイズ方式という経営スタイルと地域密着で好調な経営数字を維持し続けるラジオ・シャックの姿に迫る。(田中秀憲(ジャーナリスト)●取材/文)

“街の電気屋さん”に徹する

■約7000店舗を展開

 ラジオ・シャックの店舗数は驚くほど多い。その数は2003年9月末時点で7146店舗。業界最大手のベスト・バイをはじめ多くの競合他社を大きく引き離している。このうち約5100店舗は直接運営。残りの約2000店舗がフランチャイズによる展開である。店舗数やその出店分布、フランチャイズの方式や各店舗の標準的な床面積など、ラジオ・シャックはまさに家電販売のコンビニエンスストアである。

 同社は1921年にマサチューセッツ州ボストンで創業した。63年には同地区に9店舗を展開し、通信販売にも進出したが、一時業績が悪化し、事実上の倒産状態に陥ったところを、同年テキサス州フォートワースに拠点を置くタンディーに買収された。

 タンディーは企業買収や合併に積極的な企業で、ラジオ・シャック以外にも多くの企業の買収や合併を繰り返している。タンディーは60年に株式を上場。その後ラジオ・シャックの業績は回復。00年に社名もラジオ・シャックと変更し、現在に至る。

 ラジオ・シャックは、もともとは船舶用無線機の販売でスタートしたが、その後家庭用電化製品を多く扱うようになり、タンディーによる買収と時期を合わせ、大規模なチェーン展開を実施。現在では携帯電話やパソコンなど幅広い商品を扱っている。同社の公表資料によれば、現在の顧客数は1億5000万人以上。また、全米の住民の94%が5分以内に近所のラジオ・シャックの店舗に向かうことができるという。68年にはカナダに進出。現在はオーストラリア、イギリス、ベルギー、フランス、ドイツ、オランダなどにも積極的な出店を行っている。

 標準的な店舗の床面積は、2350平方フィートほど。03年には46億ドル以上の売り上げを、約4万人の従業員と2000人ほどのフランチャイズ加盟者により達成している。

■自社ブランドを展開

 同社の大きな特徴は、自社ブランド商品の充実だ。当初は乾電池などの簡単なものからスタートし、現在ではコードレスフォンやパソコン関連商品など幅広い。83年には有名なタンディーコンピュータを発売。IT分野でも自社ブランドを確立した。自社ブランド商品の多くはOEM(相手先ブランドによる生産)によるものだが、それらをサポートする企業にはヒューレット・パッカード(HP)やカシオ計算機などの有名メーカーが多い。また、それらOEM元も91年以降はそれぞれのブランドでの商品展開をラジオ・シャック内で始めている。

 各店舗で陳列できる商品点数は、その売り場面積により制限されるが、基本的な商品は自社ブランドが充実しており、顧客に勧めるべき商品がはっきりしている。また、自社ブランドが中心の商品構成は、仕入れやその価格設定に関して、ライバル他社に比べて有利な交渉が可能だ。クリスマスギフトなどの季節商品の宣伝広告は本社で一括して行い、コストを削減。フランチャイズ先の個人事業主も安心して経営に集中できる。

 ラジオ・シャックは、フォーチュン誌のトップ500社のなかでの358位(03年度)。競争相手はベスト・バイやサーキットシティが挙げられる。しかし、顧客層はライバル各社とは大きな違いがある。そのためスプリントやAT&Tなどの電話会社の機器販売部門も、ラジオ・シャックの大きなライバルといえる。

 一方、99年にはオンラインショップを始めたが、既存の実店舗との兼ね合いからか、さほど積極的に行っているとはいえない。オンラインならではの豊富なカタログ機能のほかは、実店舗での展示が困難な特殊商品の販売にとどまっている。

■きめ細かいサービスが特徴

 ラジオ・シャックの他社に対する優位点の1つが、その店舗数にあることは言うまでもない。しかもその7割近くが直営店という比率は、アメリカに多いフランチャイズチェーンのなかでも非常に高い。これは各店舗のコントロールが容易なことを示し、従業員の教育やアフターフォローを中心とする顧客サービスの充実を可能とする。本社が管理するデータベースにより、顧客が求める乾電池のサイズや適合する充電器の種類の確認など、些細な面まで行き届いたサービスは特筆に値する。

 ラジオ・シャックの謳い文句は「あなたには質問がある。私達は答えをもっている」。同社では、街の家電ショップがいかに密接に市民生活に関わっているかを強調することで、顧客の心をつかんでいるといえそうだ。この点は、かつての日本の家電販売店が地元密着を特徴にしていた状況に近い。

【会社概要】
■ 企業名:ラジオ・シャック・コーポレーション
       (RadioShack Corporation)
■ 社長:レオナルド・H・ロバーツ
      (Leonard H. Roberts)
■ 企業形態:株式上場済み、NYSE:RSH
■ 決算月:12月
■ 2003年度売上高:46億4930万ドル
■ 過去1年間の成長率:1.6%
■ 2003年度収益:2億9850万ドル
■ 過去1年間の収益の伸び率:13.3%
■ 従業員数(2003年度):3万9100人
■ 過去1年間の従業員数の伸び率:5.6%
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