テイクオフe-Japan戦略II IT実感社会への道標

<テイクオフe-Japan戦略II>39.電子国土ウェブシステム

2004/05/03 16:18

週刊BCN 2004年05月03日vol.1038掲載

 地理情報システム(GIS)を使ったアプリケーションの整備が進んできた。地理情報の標準化など基盤整備が図られる一方で、昨年7月に「電子国土ウェブシステム」が稼動。今年に入って「統計GISプラザ」が開設され、3月末に本格的に始まった電子申請サービスに合わせて申請書類に地図を添付するための「電子申請用添付地図作成・確認サービス」もスタート。GISを国民が手軽に利用できる環境が整ってきた。(ジャーナリスト 千葉利宏)

GISの利用が手軽に

 国土交通省、総務省などで構成するGIS関係省庁連絡会議は「GISアクションプログラム2002-2005」を策定、「GISを利用する基盤整備」と「GISの有効利用による行政の効率化と質の高い行政サービスの実現」を目標に施策を展開してきた。2003年度でちょうど4年計画の折り返し点を迎え、先月フォローアップが行われた。地理情報の標準化は、国際標準化機構(ISO)の標準化活動に合わせてJIS(日本工業規格)化が進んでいる。ISOで規格化する空間データの設計に関わる規格など11項目を、日本でも「地理情報標準」と位置付けてJIS化する計画で、3月までに3項目がJISが確定し、4項目が進行中で、残り4項目が国際規格化待ちの状況だ。

 GISの利活用に向けた取り組みは、国土地理院の電子国土ウェブシステムが稼動したのを機に本格化してきた。同システムは、国土地理院が整備している縮尺2万5000分の1の地形図をはじめとしたさまざまな縮尺の地図データと、それを背景地図として観光案内や防災情報などの地図情報を重ねあわせてパソコン画面に表示できる機能をインターネット上で実現。現在、コンテンツが利用できるのは、長崎県の「長崎史跡めぐり」、豊中市の「とよなかわがまち」、鎌倉シチズンネットの「e-ざ鎌倉」など試験公開中も含めて34サイトだ。

 最初に電子国土のポータルサイトにアクセスしてコンテンツを開こうとすると、自動的にプラグインソフトがダウンロードされてシステムを利用できるようになる。電子国土向けのコンテンツ作成に参加できるのは国、地方自治体、教育機関、NPO法人などに限られているが、「将来的には民間企業や個人が参加できるようにしたいと考えており、プライバシー問題への対応を含めて運用方針の検討を進めている」(小荒井衛・国土交通省国土地理院企画部地理情報システム推進室長)。

 電子申請用添付地図作成支援・確認サービスも、インターネットから背景地図を呼び出し、その上に書き加えた地図情報だけを添付して申請する仕組み。それぞれの役所が背景地図データを個別に管理・メンテナンスする必要がなくなり、地図情報を共有することも容易になる。現在は国土交通省のみでの利用だが、利用を希望する各府省や自治体が同サービスを利用できるような仕組みを検討している。

 統計GISプラザは、政府が保有する統計データを企業のマーケティング活動など広く一般に活用できるように、統計データ・ポータルサイトとともに開設された。国勢調査と事業所・企業統計調査のデータを地図の上にビジュアル化して表示することができる。先のGISアクションプログラムのフォローアップでは、都市部を中心に遅れている地籍整備を推進するために必要な街区座標の調査を04年度から実施して電子化するなど4件の施策が追加された。街区座標の調査には04年度予算で100億円が投入される計画だ。残り2年で標準化を含めてGISの基盤整備は大きく前進するだろう。課題はGISの有効利用をどのように促進していくか。国民や企業など利用者にとって魅力あるコンテンツが提供されるかどうかにかかっている。

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