東芝は、昨年度から順次パソコン事業の組織再編などを進めている。本格的には、昨年9月から、社内カンパニーと子会社の統合や製販体制の抜本的な改革により、「攻めに転じたい」(岡村正社長)としている。今年4月に発表した今年度(2005年3月期)から3か年の「中期経営計画」には、「04年度のパソコン事業は黒字化を達成する」(岡村社長)との見通しを示した。同社が進めるパソコン、映像機器、電子デバイス3事業を融合した“東芝流”の相乗効果でパソコン事業全体を安定的に成長させる戦略をどう順調に軌道に乗せるか注目される。(谷畑良胤●取材/文)

得意分野の相乗効果で安定軌道に

■PC&ネットワーク社設立し、パソコン事業見直しへ

 東芝は昨年9月から、パソコン事業の改革を本格化し、次々と着手している。パソコンの販売比率が高い海外については、昨年10月1日付でパソコン販売の東芝アメリカ情報システム社などを組織改革、間接人員を国内外で約500人削減した。現在は、中国と東南アジアへの開発・生産拠点移管や開発効率の改善などを進め、製販コストの大幅削減を図っている。

 今年4月には、岡村正社長が2004年度(05年3月期)から06年度(07年3月期)まで3か年の「中期経営計画」を発表。すでに今年1月には社内カンパニー「PC&ネットワーク社」を設立するなど一連の組織・生産効率の改革と、東芝の強みであるパソコン、映像機器、電子デバイス関連3事業の連携を強めて、パソコン事業全体をよりスピーディに展開させる方針だ。ただ、PC&ネットワーク社の長嶋忠浩・PC第一事業部PCマーケティング部長は、組織再編などは進んでいるが、「ユーザーから見た場合、パソコンなどの販売・流通網自体が、以前と比べそれほど大きく変わったわけではない」と、説明している。

 パソコン事業で最も大きな機構改革となったのはPC&ネットワーク社の新設だ。これまでパソコンとデジタル家電を一元的に生産・開発していた社内カンパニー「デジタルメディアネットワーク社」から切り離し独立させた。これは、最先端の開発競争が激しいパソコンとサーバー分野でスピード経営を実現するため。

 東芝では、デジタルメディアネットワーク社のほか、携帯電話を担当するモバイルコミュニケーション社とPC&ネットワーク社を加えた3つの社内カンパニー事業をまとめて「デジタルプロダクツ事業グループ」と呼ぶ。パソコンとデジタル家電事業の体制がほぼ固まったようで、パソコン市場で競合他社に対し、攻勢をかける。

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■デジタルから白物家電まで、総合電機メーカーの強み発揮

 PC&ネットワーク社が開発・生産したパソコンやサーバー製品は、100%子会社の関連会社4社が主に販売する。パソコン量販店など個人ユーザー向け販売は、昨年3月に社内分社で誕生した「東芝コンシューママーケティング(TCM)」1社が担う。

 企業向け販売は、東芝情報機器(TIE)と東芝パソコンシステム(TOPS)に加え、昨年3月に社内カンパニー2社が統合した東芝ソリューション(TSOL)の3社が、大企業、中堅・中小企業など分野別に担当。企業向けパソコンとサーバーの大半はこの3社が自社のソリューションなどと絡め販売している。

 個人向けパソコン販売を担うTCMは、量販店向けの白物家電の製販を担当していた社内カンパニーの「家電機器社」を分社。コンシューマ向け全商品の国内販売を手がける「東芝ライフエレクトロニクス」と統合して、白物家電の製販と量販店向けパソコンの販売を担う中核部隊として位置づけた。

 総合電機メーカーの東芝は、NECや富士通に対抗するため、デジタル・白物家電とパソコンなど幅広い事業領域をカバーする同社の特色を生かした販売ができる体制を敷き、販売方法の差別化を狙っている。TCMの量販店向け販売は、量販店と同社の営業担当者が交渉して行う直販がほぼ100%を占める。今後についても、直販中心の現体制を維持する方針だ。

 企業向けパソコンとサーバーなどの販売でも昨年10月、大企業向けシステム開発で実績のあった100%子会社の「東芝ITソリューション」と、ERP(統合基幹業務システム)などのソリューションを手がけていた社内カンパニーの「e-ソリューション」を統合し、TSOLを誕生させている。TSOLは、金融や通信・放送など業種・業態別で大企業システムのトータルソリューションやネットワーク構築などを提供する。

 TOPSもシステム構築やウェブソリューションを提供するなど、中堅・中小企業向けが強い。また、海外事業の再編に連動して、国内でもTIEにPC&ネットワーク社のPC事業部にいた営業担当者を100人規模で出向させ、営業機能を統合した。TIEは、情報システム部門などITノウハウをもつ中堅・中小企業から大企業まで、パソコンやサーバー、複写機、電話機、プロジェクタなど情報通信機器の販売、サポート・保守などを行っている。

 TSOLとTOPSは直販のみだが、TIEは、官公庁や自治体、教育向けが直販中心。残りは、ダイワボウ情報システム(DIS)やキヤノン販売、リコー、大塚商会など10社程度の大手ディストリビュータを通じた間接販売を行っている。

■ノートでトップシェア狙い“完全勝利”目指す

 一方、今年度はパソコン開発の効率化と商品戦略の見直しとして、昨年9月に24種類あったマザーボード数の絞り込みとODM(オリジナル・デザイン・マニュファクチャー)の比率を30-50%に高め、ローエンドモデルのコスト競争力を強化する。この見直しで浮いた社内リソースは、東芝流の“差異化モデル”の開発に集中させるという。

 東芝は、現在、ノートパソコンを中心に、コンシューマ向けで同社のAV(音響・映像)機器技術を盛り込んだパソコン「ダイナブック」5機種と、企業向けパソコン「サテライトシリーズ」2機種、モバイルパソコン「ダイナブックSS1600とSS SK」を販売。SSシリーズは、量販店とTSOL、TOPS、TIEの子会社3社で提供している。「ノートパソコンの開発キーワードは“AVパソコン”と“シン&ライト(薄くて軽い)”。このラインアップでノートパソコンシェアでトップを狙う」(長嶋部長)と、パソコン事業の“完全勝利”に自信を見せている。