テイクオフe-Japan戦略II IT実感社会への道標

<テイクオフe-Japan戦略II>44.電子申告が全国展開

2004/06/14 16:18

週刊BCN 2004年06月14日vol.1043掲載

 今年2月に名古屋国税局管内から始まった国税電子申告・納税システム、通称e-Tax。順次、対象税目も拡大され、今月からは全国展開がスタートした。9月には国税関連の申請・届出手続き約700種についてもオンライン化を実施する予定。当初は電子申告を利用するのに必要な公的個人認証サービスが直前にスタートするなどでPR不足の印象もあったe-Taxも、来年2月の確定申告時期も視野に入れ、普及に取り組んでいる。先月、国税庁がまとめた「平成15年分の所得税と贈与税、個人事業者の消費税の確定申告状況について」によると、確定申告書の提出件数は、前年比51万7000人増加して、2139万人と過去最高を更新した。その理由は主に還付申告件数の増加によるものだ。(ジャーナリスト 千葉利宏)

税理士などの対応がカギ

 年金受給者の増加などによって確定申告件数は今後も年々増加することが予想されている。「税務署窓口の混雑を緩和し納税者の利便を向上するために、ITを活用した申告メニューを整備していく必要がある」と、国税庁の岩崎吉彦・情報技術室長はe-Taxが果たす役割の重要性を強調する。さらに増加傾向にあるのは、個人だけではない。今年4月からは消費税の納税義務の免除が、課税売上高3000万円以下から、1000万円以下に引き下げられたことで、消費税の確定申告件数も増加が予想され、業務の効率化は国税庁にとっても大きな課題となっている。

 さて、今年2月から始まったe-Taxの利用状況はどうだったのだろうか。利用を始める前には、所轄の税務署長に開始届出書を提出してID・パスワードとクライアントソフトを入手する必要があり、名古屋国税局管内では昨年11月から開始届出書の受付を開始したが、今年3月8日までの提出件数は個人が6861件、法人641件の合計7502件。実際にe-Taxを利用して申告した件数は、所得税の確定申告が2482件。個人事業者の消費税確定申告が488件だった。

 名古屋国税局管内の申告件数は例年、国全体の約10%に相当するという。今年の申告書提出件数が約200万件だとすると、e-Taxの利用状況は0.1%という結果だった。確かに全体からみると非常に小さい数字だが、国税庁ホームページ(HP)の「所得税の確定申告書作成コーナー」の利用は、アクセス件数518万件(前年比55%増)、作成した申告書を出力した件数180万件(68%増)と潜在需要はある。

 ただ、現状ではe-Taxを利用しても領収書などの添付書類を郵送する必要があるため、国税庁HPで出力した申告書を添付書類と一緒に郵送する手間と大して変わらない。税務署では紙の申告書をOCRで1枚ずつ読み取る作業が加わるため、電子データで送付してもらった方が事務効率はアップする。国税庁HPで作成した申告書を紙に出力せずにそのままe-Taxで送付できる仕組みも導入したが、今後の課題はe-Taxの利用を拡大していくための施策をどう打つかだ。

 「e-Taxそのものは順調に稼動して、システム的に問題は生じなかった」(岩崎室長)と、今月からの全国展開に自信を見せる。システム面では十分に対応できそうだが、利用者が手軽に使いこなせるかどうかがポイント。ヘルプデスクの利用状況も「思った以上に活発に利用された」ことから、e-Taxを使い始めようとする人、特に年金受給者などの高齢者に対してきめ細かなサポートが必要かもしれない。さらに「企業が源泉納付や消費税の申告にe-Taxを利用していただければ、事務の効率化にも役立つはず」と、今後は企業へのe-Tax普及にも本腰を入れることにしており、税理士事務所などの対応が利用拡大のカギを握ることになりそうだ。

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