情報化新時代 変わる地域社会

<情報化新時代 変わる地域社会>第8回 千葉県浦安市(下) 電子申請との連係も強化

2004/06/28 20:43

週刊BCN 2004年06月28日vol.1045掲載

 統合型GIS(地理情報システム)を積極的に導入した浦安市は、デジタル地図の共用空間データマップ「e-マップ」を双方向型のウェブGISとして構築し、市民向けに行政の情報配信サービス「e-まっぷ掲示板」として2003年10月から提供している。今年6月には、地図付きメールの送受信サービス「e-まっぷメール」のサービスを追加、夏をめどに自由に地図が作成できる「myまっぷ」を開始するなど、市民参加型による電子自治体の実現に向けた取り組みを着々と進める。電子申請に向けた取り組みである「申請書ダウンロード」でも、地図の記載が必要な申請書ではGISを利用できるようにした。GISと電子申請書の連係を広げることで利便性が高まった。(佐相彰彦)

市民参加型の街作り 統合型GISで実現

■分かりやすい行政情報を追求

 浦安市が統合型GISの構築に着手したのは、1997年に情報システム整備計画を策定するための調査を行った際、10以上の課からGISを導入したいとの声が挙がったためだ。まずは00年に各課で活用できる共用空間データベースを整備した。

 この共有空間データベースは、各課で個別に管理していた地図情報から情報政策課が必要なデータを収集して作成したことが特徴だ。醍醐恵二・経営企画部情報政策課電子自治体推進室副主査は、「各課でGISを導入していた当時は、地図データに重複していた部分もあったため、2重にも3重にもコストがかかっていた」と振り返る。各課が独自のGISを導入した場合、コストは建築指導支援システムで2231万円、住居表示台帳システムで2119万円、雨水台帳管理システムで4851万円、下水道情報管理システムで3475万5000円、公園台帳管理システムで3100万7000円かかったという。各システムのコストを合わせると1億5777万2000円。

 しかし、重複データを統一し、構築した統合型GISのコストは9395万5000円。個別のGISを導入した場合と比べ、6381万7000円の削減が可能になった。

 浦安市では、庁内用に共有空間データベースを構築すると同時に、庁内だけでなく市民にもGISの地図データを公開することを計画していた。このデータベースを、市民が利用できるサービスとして、03年10月から「e-まっぷ掲示板」の提供を開始した。

 「e-まっぷ掲示板」は、行政が発信する情報を、地図を通して提供するサービス。醍醐副主査は、「活字だけの情報配信よりも、地図データを用いることで、公園や図書館、運動場など公共施設の検索や、都市計画法指定状況など、誰でも分かりやすく情報を収集できるようにした」と強調する。

■市民の活用が増加傾向に

 「e-まっぷ掲示板」は、行政側からの情報配信という位置づけにより、「市のホームページにアクセスする機会を増やす」(醍醐副主査)サービスである。同サービスへのアクセス数は、1日平均で100件以上になっており、市民にとって有益な情報を提供するサービスとして定着しつつあるといえる。

 しかし、「このサービスだけでは、市民参加型の電子市役所を実現しているとはいえない」とし、さらに利便性を高めるために「e-まっぷメール」のサービスをこのほど開始した。このサービスは、「e-まっぷ」の地図データをメールで送受信できるもので、「このサービスにより、市民が自分の住む浦安市を良い町にしようと、地図を活用するようになった」(醍醐副主査)という。

 というのも、サイトでは市長に意見や要望を伝える場として「市長への手紙」というコーナーを設けており、「e-まっぷメール」を開始してから、「地図データを使って街周辺に対する意見や要望を伝える市民が多くなった」ためだ。市民にとっては、地図データが活用できるようになったことで、これまで以上に意見や要望を具体的に伝えやすくなったわけだ。

 また、教育現場での活用も進んできた。小学校や中学校での町づくり学習の一環として活用しているケースも増えてきた。例えば、浦安市内での駅前の放置自転車調査について、「地下駐輪場が整備されているため、放置自転車数が少ない」や、「放置自転車が多いため、駐輪場の整備が必要」、「所在不明の自転車が多い」などといった分析に地図を活用した小学校や、「バリアフリーマップ」を作成する際に、調査結果を分かりやすくするために「e-まっぷ」を活用した中学校も出てきた。

 今年夏には、地図データを市民が作成できる「my-まっぷ」のサービスを開始する予定。醍醐副主査は、「市民と行政が情報交流するためのツールとして、サービスを充実させていく」と意欲を燃やしており、市民が位置情報をテーマに意見交換を行うサービス「e-まっぷひろば」の開発も進めている。

 「e-まっぷ」は、6月1日から提供している「申請書ダウンロード」サービスでも活用できるようになっている。浦安市への申請で添付書類に地図が必要な164手続きのうち、電子化した43手続きのサイトで地図を記入する欄をクリックすれば、地図が自動的に作成できるようになっている。「地図を手書きすることは、面倒だという声が多かった」が、GISを活用することで不満を解消できた。

 電子申請と地図情報の融合など電子化により、利便性は確実に高まってきた。今後は、統合型GISと電子申請との連係を模索し、市民参加型で、さらに利便性の高い電子市役所を目指していく。

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