拓け、中堅・中小企業市場 事例に見るSMB戦略

<拓け、中堅・中小企業市場 事例に見るSMB戦略>第14回 ブレイク

2004/07/12 16:18

週刊BCN 2004年07月12日vol.1047掲載

 オフコンのシステム構築に実績のある某ディーラーの営業担当者は、訪問先の受付表に自分の会社名を記入しない。そればかりか、氏名だけを記入した後、すでに訪問を済ませた競合他社名を探すため、受付表にじっくり目を通す。「会社名を書けば、うちのシステムが研究されてしまう。また、受付表に目を通すのは、他社がどう提案してくるか研究できるため」と、話す。

受付表に会社名を書かず

 景気が回復傾向にあり、中堅・中小の流通・サービス、小売業などにもIT投資に対する意欲が見られるようになった。こうしたなか、業績が右肩上がりの企業にはITベンダーが何社も群がる姿が見られる。

 前出の営業担当者は、訪問先の受付表に自社と似たソシューションをもつ競合他社名を見つけると、システム提案はしないで、挨拶と談笑だけでその場を去る。そして、会社に戻ると競合他社のシステムを念入りに研究し、そこと差別化できるような新たなシステム提案を顧客に持ち込む。営業担当者は、競争を勝ち抜くため、こんな小さな努力にも気を配る。

 国内の中堅・中小企業には、依然として数万台のオフコンやメインフレームなどレガシー(旧式)システムが存在するといわれる。これまで取材したレガシーの再構築事例では、「オフコンやメインフレームの方が安全で、自社の業務にマッチしている」(小売業のIT担当者)と、再構築前には多くのIT担当者がレガシーのオープン化に疑念を感じていた。

 半面、中堅・中小企業のIT担当者は、レガシーの運用・サービスに必要なランニングコストやオフコンを扱うシステムエンジニア(SE)の人件費負担を極力少なくし、削減したコストを新たな戦略や不足する部門への人員配置に振り分けたいと試行錯誤を続けている。

 堅牢なセキュリティ対策を顧客に示すなど、オープン化への疑念を晴らしたうえで、ランニングコストの削減策と業種・業態に合致した新戦略への提案ができれば、レガシーの再構築案件は、自ずと受注できるはずである。

 この連載で記事に取り上げたことで、当該顧客を巡って「競合が増えた」と、あるITメーカーからお叱りを受けたこともあったが、中堅・中小企業市場を狙うITメーカーの情報戦が熾烈さを増していることをうかがい知ることができた。

 一方、第8-10回で紹介したOCRソフトウェアベンダーのメディアドライブに関する事例は、連載中にNECが発表したIPベースのシステム構築サービス「ユニバージュ」の中堅・中小企業向け「ソリューションパック」の先行事例だったようだ。こういう成功した先行事例があり、ITメーカーの各種サービスが構築されていくのだろう。

 次回以降、さらに取材を進め、これまで取り上げた業種・業態以外の導入事例を紹介していく。(谷畑良胤)
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