視点

対中ビジネスは多元的な視点で

2004/12/06 16:41

週刊BCN 2004年12月06日vol.1067掲載

 10月26日からの5日間、中国・北京で開かれた情報通信関連の総合展示会「PT/EXPO COMM CHINA2004」にCIAJとして日本館を設け、会員のIT企業に出展してもらった。その日本館に今回、中国政府の要人が来て頂けると聞き、「さて、誰に来て頂けるのか」と思っていたところ、温家宝首相の訪問を受けた。

 最近の反日問題などもあり、「首相の訪問は立場上難しいのではないか」と考えていただけに大変驚いたが、入口で「ようこそ、ありがとうございます。日本のIT企業がこれからの中国のIT化に貢献したく、今年も出展しました」と挨拶すると、温首相はニコニコしながら「ありがとう」と言って何度も手を振り、日本の関係者に拍手して回られた。

 松下電器産業のブースが一番奥にあり、そこに温首相をご案内して5-10分ほど見学して頂いたが、その後すぐに帰られると思っていたら、富士通の関係者が「ぜひ、うちにもお寄り下さい」と声をかけると、周囲のセキュリティを振りきって見学された。こちらとしては予定外の行動だけに冷や冷やしたが、温首相ご本人はさらに他のブースも回られようとされ、周囲に制される場面もあった。

 最後は、「(全部を見学できず)すみません。申し訳ない」と手を振って去っていかれたが、昨今の日中の感情問題を考えると、政治の中枢におられる方にそういう対応をして頂き、非常に感激した出来事だった。

 今回の展示会には計30万人が訪れ、中国のネットビジネスにかける意気込みを感じた。2006年にはITU(国際電気通信連合)の「テレコムワールド」が香港で開かれる予定になっており、また現在3億人と言われる携帯電話加入者が、北京五輪がある08年には6億人に膨れ上がるとの予測もある。中国との関係は今後さらに重要性を増すに違いない。

 日本企業は、これまで対中ビジネスといえば、様子を見ながら小出しに手を出してきたところがあるが、そろそろ1歩踏み込む時期に来ているのではないか。「対中ビジネスは難しい」との声を耳にすることが多いが、十数億人もの市場を一元的な視点で捉えず、多元的に見ていけば活路は開けるのではないか。それにはまず、中国での存在感を高める発想が必要だ。例えばW-CDMAにしても、中国では欧州発の規格だと認識されているが、これはNTTドコモも開発に参加し、なおかつ、世界に先駆けて商用サービスを提供したという実績をPRしていく必要があるだろう。
  • 1