総IT化時代の夜明け SMBの現場を追って

<総IT化時代の夜明け SMBの現場を追って>14.マイスター(下)

2005/02/07 16:18

週刊BCN 2005年02月07日vol.1075掲載

 北海道函館市のソフトウェア開発のマイスター(瀧浩幸社長)は、5年前にソフトウェアの受託開発を原則としてやめることにした。図形や絵柄、地図などのイメージ画像をベースとしたオリジナル商材の開発や販売に専念するには、受託開発からの脱却が不可欠だったからだ。開発したオリジナル商材は、販売パートナー経由で全国へ販売する。一部製品は英語版もつくり、世界展開も視野に入れる。

受託開発をやめオリジナル商材へ

 瀧社長は、1995年にマイスターの前身となるアクト・システムズを函館市内に設立した。起業してから5年間は、ソフトウェアの受託開発が事業の中心だった。受託開発は赤字にはならなかったものの、収益率を劇的に拡大する足がかりは得られなかった。

 瀧社長は、「仕事が来るのを待つのではなく、顧客先に出向き、顧客が財布を開いてお金を出してくれる提案なり商材を開発する」ことを決意。00年にマイスターを設立するとほぼ同時期に、オリジナル商材を投入。それまで続けてきた受託開発を一部を除いてやめた。瀧社長にとって、大きな決断だった。

 オリジナル商材のビジネスが成功すれば、受託開発とは比べものにならない高収益体制の構築が可能だ。将来は社員数50人で売上高50億円、最終利益30億円の業績を目標に掲げる。単純計算で、1人あたり1億円を売り上げ、6000万円の利益を得るという計画だ。

 現在の社員数は13人。今年度(05年9月期)の売上高は前年度比約66%増の約2億円を見込む。最終利益ベースでも売上高同様、着実に拡大しつつある。将来目標にはまだほど遠いものの、「受託開発の大部分をやめてから数年は、正直言って厳しいときもあった」(瀧社長)と、過去の立ち上がりの時期と比較すれば、オリジナル商材の事業は大きく前進していると言える。

 04年3月に製品化した野球のスコアブックソフト「ビスコ・フォー・ベースボール」は、図形や絵柄、地図などのイメージ画像をベースとしたソフト開発を得意とするマイスターの方向性を象徴する商品だ。マイクロソフトの画像加工ソフト「ビジオ」上で稼働するアドオンソフトとして開発したところ、予想以上の引き合いが来た。

 スコアブックは、野球場に持ち込んで、ゲームの進行に合わせて記録していく。このため通常のノートパソコンだけでなく、ペン入力や操作が可能で、携帯性に優れたタブレットPC上でも動かせるように開発した。

 タブレットPCを製造する大手メーカーからは「タブレットPCを売り込むのに格好のアプリケーションソフト」と好評を得た。マイクロソフトからは「英語版も欲しい」と要望を受けて04年12月に英語版を開発した。タブレットPCやビジオの拡販を望むベンダーや販社にとって、「ビスコ・フォー・ベースボール」は、頼もしい援軍となっているようだ。

 ビスコは、今後シリーズ化を検討している。現在の野球に加えて、ゴルフやラグビー、サッカー、ボーリングなどのスコアボードに対応した製品開発を予定している。 受託開発時代は、タブレットPCを開発している大手ベンダーと商談する機会すらなかった。ところが、オリジナル商材の開発に成功した今は、大手ベンダーと「対等の立場で」(瀧社長)で商談を進めている。「拡販に協力したい」と申し出てくれる大手ベンダーも出始めており、新しい販売チャネルの拡充が急ピッチで進んでいる。

 前号で紹介した「函館市防災マップ」に活用した図形や地図などをインターネットブラウザ上に表示する国際規格「SVG(スケーラブル・ベクター・グラフィックス)」をベースとした商材など、他のオリジナル商材も含めて、今年度末までに30社ほどの販売パートナーと販売契約を結ぶ予定だ。

 瀧社長は、「最終的な顧客の要望に応えるのは当然だが、同時に販売パートナーの利益に結びつく提案も大切」と、販売パートナーにもメリットがある代理店販売のビジネスモデルの構築に力を入れる。

 ソフト開発ベンダーのなかには、製品開発に没頭するあまり、ビジネス全体を見失うケースがある。マイスターでは、製品開発に加えて「顧客、販売パートナーなど当社製品に関するビジネスに関わる方々全員にメリットがある仕組みを作っていかないと生き残れない」(瀧社長)と、ビジネスモデル全体を視野に入れた展開を重視する。

 良い商材の開発とそれを顧客に届けるビジネスモデルの両立が、事業拡大には欠かせない。マイスターは、今後も図形や地図などのイメージ画像をベースとした得意分野中心に、顧客と販売パートナーにメリットある商材を開発していく方針だ。(安藤章司)
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