総IT化時代の夜明け SMBの現場を追って

<総IT化時代の夜明け SMBの現場を追って>17.アタックス(下)

2005/02/28 16:18

週刊BCN 2005年02月28日vol.1078掲載

 オービックビジネスコンサルタント(OBC)は、経営コンサルティング会社や会計事務所、ISV(独立系ソフトウェアベンダー)など、さまざまな業態のビジネスパートナーとの連携を進めている。従来は、システムインテグレータや事務機器の販売会社などとの連携が中心だったが、ここ数年でアタックスグループをはじめとする経営コンサル会社や会計事務所、ISVなどのパートナーが増えた。

会計事務所やISVとの連携を強化

 OBCは、財務会計ソフト「勘定奉行」などのパッケージ製品を主にシステムインテグレータや事務機器の販社などのパートナーを通じて販売している。こうした販売パートナーと結ぶ販売契約では、販売本数の目標や達成度合いに応じたリベートなどを設定することが少なくない。販売パートナーは、目標達成に向けて営業活動を展開し、OBCは販売パートナーの営業活動がよりスムーズに進むよう支援する。

 これに対して、アタックスグループなど経営コンサル会社や会計事務所、ISVなどといった業態のパートナーとは、販売目標や達成度合いに応じたリベートなどの設定は原則として設けていない。これまで、会計事務所やISVといった業態とOBCの業務アプリケーションは、市場で競合するケースもあった。だが、中堅・中小企業のIT化が急速に進んでいることを背景に「共通のメリットが見えてきた」(OBCの石原徹・営業部名古屋支店支店長)と、協業環境が整ってきたと話す。

 財務会計ソフトは、企業などの当事者自ら財務データをコンピュータに入力する仕組みである。ところが、会計事務所のなかには、顧客企業から紙に記載された財務諸表を受け取り、当事者に代わってコンピュータへ入力する「代行入力」を重要な収益源としているケースがある。このため、財務会計ソフトを利用者に勧めるには、従来の「代行入力」の収益源に依存するビジネスモデルから脱却する必要がある。

 アタックスグループでは、早くから顧客企業の経営を支援する経営コンサルティングへ軸足を移したことで、利用者のIT化を推進できる体制をつくった。利用者自らが入力するIT化を進めることで、アタックスグループは顧客企業の経営分析や経営コンサルティングに経営資源を集中できる。顧客企業の市場競争力を高めるには、ITを活用した業務の効率化が欠かせない。ITが急速に普及するなかで、多くの会計事務所はアタックスグループ同様、顧客企業の競争力を高めるための業務の効率化に迫られている。

 ただ、実際には、顧客企業先に出向いてパソコンの設定やLANの敷設工事、ソフトウェアのインストール、操作説明などを行わなければならない。そのため、システムインテグレータや事務機器販売などを手がける「ITの専門技術のある販売パートナーを紹介するケースが多い」(OBCの石原支店長)と、OBC、販売パートナー、会計事務所・経営コンサル会社の3者がうまく連携をとれる体制を構築していると話す。OBC名古屋支店の販売パートナーは約250社、連携している会計事務所や経営コンサル会社は約30社ほどあるという。

 会計事務所は、OBCやOBCの販売パートナーであるシステムインテグレータや事務機器販社と連携することで、新しい顧問先(顧客企業)を開拓できる可能性が高まるメリットがある。OBCやその販売パートナーから見れば、ITを導入したあと、会計事務所や経営コンサル会社が専門的な経営コンサルティングサービスを提供することで、ITがより有効に活用され、次のIT投資に結びつきやすいメリットがある。こうした連携は、ITの利活用の推進や経営コンサルティングにシフトしようとする会計事務所の方向性とも合致する。

 一方、ISVとの連携では、各支店の裁量で地場の有力ISVとの連携を積極的に進めている。名古屋支店では、営業エリアに自動車部品メーカーなどの製造業が多いため、製造関連のISVとの連携に力を入れる。

 すでに、日本ユニテック(名古屋市中区)の生産・販売統合システム「ユニメックス」、テクノア(岐阜県岐阜市)の機械・電機・電子装置製造業向けERP(統合基幹業務システム)「テックス・エス」などの製品と連携している。他にも食品卸向け業務システムやワークフローシステムなど地場のISVを中心に10社ほどの製品との連携を実現している。

 こうしたISVの販売チャネルにOBCの奉行シリーズを供給したり、逆にOBCや販売パートナーの顧客をISVに紹介するなど「相互にメリットが出る」(OBCの米本英司・営業部名古屋支店システムコンサルタントリーダー)よう連携を強化している。

 経営コンサル会社や会計事務所、ISVとの連携は、奉行シリーズの商品価値を高め、販売パートナーを巻き込んだ収益拡大に大きく貢献している。(安藤章司)
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