e-Japanのあした 2005

<e-Japanのあした 2005>46.次世代ブロードバンド構想2010

2005/08/01 16:18

週刊BCN 2005年08月01日vol.1099掲載

 「2010年までにブロードバンド・ゼロ地域を解消すること」──情報通信分野で世界のフロントランナーをめざす「次世代ブロードバンド構想2010」が7月15日に発表された。総務省が昨年6月に立ち上げた「全国均衡あるブロードバンド基盤の整備に関する研究会」(齊藤忠夫座長=東京大学名誉教授)の最終報告として取りまとめたもので、冒頭のデジタルデバイド(情報格差)解消の目標に加え、「2010年までに次世代双方向ブロードバンド(上り30Mbps級以上)を90%以上の世帯で利用可能にすること」との新たな目標が設定された。今後は国、地方自治体、通信事業者が連携して目標達成に向けた施策をどう具体化していくかが焦点となる。(ジャーナリスト 千葉利宏)

 総務省は、昨年5月に次期ICT戦略として「u-Japan構想」を公表。12月には具体的な政策パッケージ「u-Japan政策」と工程表をまとめ、「2010年までに国民の100%が高速または超高速を利用可能な社会に」との方向性を示した。これを具体化したのが今回の次世代ブロードバンド構想で、e-Japan戦略がスタートした時に総務省が策定した「全国ブロードバンド構想」(01年10月)の後継計画との位置づけだ。

 「次世代構想の策定にあたっては、具体的なデータをできるだけ集めて、2010年の通信インフラの整備イメージを検討した」(玉田康人・総務省総合通信基盤局高度通信網振興課課長補佐)。5年前はブロードバンド化での出遅れを取り戻してキャッチアップするとの目標が明確だったが、いまや世界で最もブロードバンド環境が整備された国として独自の目標設定が必要になっている。そのためのデータとして市町村単位、世帯単位でブロードバンドの普及状況などをきめ細かく調査。市町村の人口・面積とサービス提供状況との関連を調べることで通信事業者の採算性なども分析した。

 05年3月末のブロードバンドサービス提供市町村は93.2%に達しているものの、提供されていない市町村も207団体となった。加入可能世帯数で見ても、光ファイバーが3590万世帯(全体の72%)、DSLが4630万世帯(93%)、ケーブルインターネットが3310万世帯(66%)だが、全く利用できない世帯も345万世帯に達した。採算性の分析では、平均人口約2万1500人以下で条件不利地域(過疎、離島、半島など)を含む市町村では光ファイバーの利用可能率が10%程度に止まり、ADSLが利用不可能な市町村は平均人口が約6500人以下の過疎町村規模に集中していることが判明した。現時点でブロードバンドサービスが提供されていない地域は、その多くが事業採算の合わないところであると考えられ、デバイド解消のためには政府が積極的に関与していく必要性を示したと言えそうだ。

 興味深いデータに、デバイドを放置した場合の経済的格差の試算結果があった。ブロードバンドを利用した場合のプラス効果(医療、福祉、教育分野などでの経費削減や、産業分野における経済効果)だけでなく、ナローバンドしか使えない場合のマイナス効果(ダウンロードなどでの待機時間の長時間化や作業効率の低下)を加えたのが特徴で、合計すると04年で年間134万円だった経済的格差が、2010年には同229万円までに拡大するという。

 次世代構想では、デバイド解消に加えて上り30Mbps以上に高速化して「情報発信に強い」より高度なブロードバンドの普及をめざす目標も掲げられた。放送コンテンツのネットワーク配信や、医療情報のやり取りなど大容量データに対応できるブロードバンドの整備も急ピッチに進むと期待される。

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