視点

ソフトウェア産業の新しい市場開拓を

2005/10/10 16:41

週刊BCN 2005年10月10日vol.1108掲載

 日本のソフトウェア産業の課題が議論される時、そのほとんどが人材問題に焦点が当てられている。確かに人材の不足や質の低下は深刻ではあるが、仮にこの問題が解消したとしたら、わが国のソフトウェア産業の未来は明るくなるのであろうか。

 わが国の2000年におけるソフトウェア輸出入額は、輸入が9188億円、輸出が90億円という統計データがある。輸出が極めて少額なのは何とも情けない。なぜこんなに輸出が少ないのであろうか。人材問題が解決すれば輸出は増えるのであろうか。確かにいまのソフトウェア産業は国内の需要をまかなうのに精一杯という事情はある。そして、国内需要だけでいまのところ食べていけるのである。

 一方、日本のソフトウェア産業は海外でも評価されるような優れたソフトウェアを開発できる技術力がないことも事実である。それと同時に、海外市場を相手にしようという意識や発想がもともと希薄である。いまのソフトウェア需要の多くは国のe-Japan戦略に支えられているといってよい。電子政府や電子自治体あるいは高度IT社会の実現のために多額の公的資金が投入されており、その多くがソフトウェア産業に回っていると考えられる。しかし、この需要もいずれは飽和する。そうなった時にソフトウェア産業はどこに活路を見出せばよいか。

 それにはまず国内の新しい市場を開拓することである。欧米では航空宇宙産業や軍事産業など巨大な産業がソフトウェア技術と人材を育て、ソフトウェア産業に市場も提供してきたといってよい。しかし、日本にはそのような産業はないし、これからも期待できない。いまのところ世界で優位に立つ製造業も、発展途上国の追い上げにあって苦しくなるのは時間の問題であろう。それならばこれから世界のリーダーシップがとれる産業を、国を挙げて育成する必要がある。たとえば、四方を海に囲まれた日本の地理的優位性を考えれば、今世紀の産業として有望と思われる海洋産業などはどうか。この分野は裾野が広く、多様なソフトウェアの需要も見込まれる。

 日本の製造業は国内市場が飽和することを予見して、早くから海外市場を開拓した。ソフトウェア産業も見習うべきである。そのためには、優れた技術者の育成と技術力向上のほかに、国際化に向けた意識改革が必要である。国内市場だけに頼っていたのでは、ソフトウェア産業の明日はないように思える。
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