ユビキタスが日本を変える IT新改革戦略

<ユビキタスが日本を変える IT新改革戦略>16.ICパスポートの電子申請体験記

2006/04/17 16:04

週刊BCN 2006年04月17日vol.1134掲載

 外務省が3月20日からICパスポートの発給を開始した。パスポート電子申請は、電子自治体の汎用受付システムを使用するため、政府がまとめた「オンライン利用促進のための行動計画」の対象ではないが、IT新改革戦略で打ち出した「オンライン利用率50%以上」の目標には電子自治体も含まれ、当然、利用を促進していくべき手続きだ。これまでに社会保険庁の「年金加入記録照会・年金見込額試算」、国税庁の「電子申告(法人税)」を利用してみたが、今回は筆者が住む埼玉県でパスポート電子申請を試みた。

 パスポート電子申請は、当初から添付書類を減らす工夫として写真と自署(サイン)をJPEGデータで送信できる仕組みが導入されているが、本人確認のための戸籍謄本とパスポートセンターから通知を受けるための官製はがきを郵便書留で送付する手続きは残されたままだ。筆者の戸籍は札幌市にあるので、札幌市のホームページ(HP)を開くと、申請書・届出書ダウンロードサービスが提供されていた。戸籍証明請求書のページを開いて必要事項を入力してプリントアウト、本人確認用に顔写真付き住基カードのコピーと返信用封筒、発行手数料450円分の郵便小為替を同封し普通郵便で送付。4日後に、戸籍謄本が無事に送付されてきた。

 これからがパスポート電子申請である。すでにICカードリーダーライター、住基カード、公的個人認証による電子署名など電子申請に必要な環境は整っているので、埼玉県のHPにアクセスして指示された手順どおりに作業を進めた。最初にブラウザの環境を設定して、HPから「JAVA実行環境」「パスポート用JAVAライブラリ」「写真・自署編集ツール」の3つのファイルをダウンロードして、パソコンにインストール。ここまでの作業は、他の電子申請も経験済みなので迷うことなくスムースに終えた。

 次は申請に添付する写真と自署のデータ作成。写真は指定された200万画素程度のものをデジカメで撮影し、自署は紙に書いたものを指定の解像度でスキャナで読み取ってパソコンに取り込んだ。これらのデータを写真・自署編集ツールから読み出すと、パスポート用に自動調整してくれて、多少手直しするだけで添付用データを簡単に作成することができた。あとは申請画面を開いて、電子申請を行うだけである。

 ところが肝心の申請画面が開かない。何度やってもダメなので、外務省のヘルプデスクに電話を入れた。原因は「他の電子申請用にインストールしてある異なるパージョンのJAVAアプリケーションが邪魔したため」とのこと。「なるほど、これが朝日新聞でバージョン違いで電子申請が利用できなくなると指摘していた現象か…」と文句を言いながら、パスポート申請に必要ないJAVAアプリをいったん削除してみると、問題なく申請画面が開いた。あとは必要事項を入力し、写真・自署データを添付して、最後に電子証明書をつけて送付すると、すぐに画面に受付番号が表示され、番号を戸籍謄本と返信用はがきに記入し郵便書留で送付して手続きは完了した。

 結果的に、郵便小為替の購入と郵便書留の送付で2回、郵便局には出かけたが、パスポートセンターに出向くのは最後のパスポート受け取りの1回で済み、個人的感想ではあるがある程度の利便性は実感できた。もちろん、細かな部分での改善は必要である。戸籍謄本とパスポートの発行手数料に電子納付が利用できれば郵便小為替や印紙を買う手間が省ける。さらに戸籍謄本自体が電子化されれば添付書類の郵送は不要になるし、紙のままの場合でも戸籍のある自治体に電子申請して、そこから申請者本人ではなく直接、パスポートセンターに郵送してくれれば、利用者は郵便を使わずに済む。オンライン利用率アップに向けて電子申請の利便性を高めるには、多くのサービスが電子化されて連携して利用できるようにすることが重要だろう。そうした観点からも、JAVAアプリの問題は致命的である。電子政府の総合窓口「e-Gov」の受付システムの稼働である程度の改善は見込めるものの、e-Govに乗らない個別申請手続きや電子自治体を含めた環境で早急に解決すべきだ。(ジャーナリスト 千葉利宏)
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