パソコン市場回復の切り札と期待された「Windows Vista」の立ち上がり商戦がほぼ決着した。BCNランキングで、2月のパソコン全体の販売動向をみると、台数ベースでは前年同月比101・2%。ほぼ前年並みの伸び率となった。ノートは109・3%と2ケタ近い伸びになったが、デスクトップは86・2%で2ケタ減から抜け出せていない。

 この結果に業界内の反応は複雑だ。「Windows 95」以来の深夜イベントで飛躍的な伸びを期待した関係者からは、落胆の声が聞かれる。マスコミなどの反応はさらに冷淡で、Vista商戦は低調と切り捨てる論調が目立った。

 しかし、昨年の2月から2ケタのマイナス成長を続けてきた個人市場が、13か月ぶりに「前年並み」にまで回復したことは事実である。期待とのギャップはともかく、とりあえずはその成果を素直に受け止めるべきだろう。昨年12月のパソコンの前年同期比81・4%と比較すると、伸び率は約20ポイント上昇したことになる。実のところ、この結果を「ほぼ予測通り」と見ている業界関係者も少なくないはずである。

 世帯普及率が70%近くに達した市場で、新しいOSに爆発的な初期需要を期待するのは無理がある。「Windows 95」の時代には、GUIの変更が、新しいゲームソフトのような感覚で熱狂的に受け入れられた。しかし、「Vista」は「95」に較べればはるかに複雑なOSである。にもかかわらず「95」と同じ手法で「エアロ」などの新しいGUIを強調しすぎたことが、逆に「Vista」の実像を曖昧にする結果につながったように思える。

 個人用パソコンが新しい需要を開拓するには、デジタルTVの機能を取り込んで、家庭でAVセンターの主導権を握らなければならない。リビングの覇権争いは、ほぼ大画面のデジタルTVに軍配が上がった。次は父親や子ども部屋の机で、パソコンとテレビのどちらが占有権を握るかの争いだろう。「Vista」は、今後1─2年間の中期戦略のなかで、パソコン主導の新しいAVシステム環境を育て上げようという狙いのもとに開発されたOSである。少なくともゲームマシンと同じ感覚で、発売直後からブーム的に売れる商品とは本質的に異なっている。

 緒戦での伸び率にこだわり過ぎることは、逆に市場の失望感を増幅させることになりかねない。マイクロソフトは、市場に対してもう一度、明確なメッセージを打ち出すべきだろう。