本連載では、利益率の低さが業界全体で問題視されているSIerの利益構造に焦点を当て、高収益体質への改善に向けて挑戦するSIerの取り組みを伝えている。ただ、その一方ではユーザーもチャレンジしている。膨れ上がる情報システム、そのITコストを削減しながらいかに維持するかと──。そこで本号から4回は番外編として、「ユーザーの挑戦」に目を向け、ITコスト削減の取り組みを紹介する。

“脱おんぶにだっこ”果たす

小分け方式で地場SIerに発注

 「大手コンピュータメーカーに“おんぶにだっこ”するような、丸投げ発注は絶対にしない」──。長崎県が持つIT投資の基本コンセプトだ。

 県や市町村の電子化、ITを活用した住民への情報サービスづくりは、大手コンピュータメーカーに一任するケースが一般的だ。企業と異なり、自治体にはITに精通した人間が少なく、しかも知識を蓄えた段階で異動してしまう。このような事情から、自治体がベンダーに丸投げする構図が生まれる。この流れは、ITベンダーの懐を少なからず潤わせていた部分がある。

 長崎県は九州地区のなかでもこの丸投げ体質が色濃く染みついている自治体だった。ITコスト削減を命題とする長崎県がまず着手したのは、目先のコスト削減施策ではなく、この体質からの脱却だった。主導したのは、民間企業出身の島村秀世・総務部理事(情報政策担当)。島村理事は、大手コンピュータメーカーへの依存度を軽減させ、その代わりに地場企業への発注を増やしていった。

 下欄にある表では、電子県庁システムにおける地場企業の参入状況を示した。01年度以前は地場企業が開発案件を受注することはなかった。だが、島村氏が総務部理事に就任してからは様変わりする。02年には48件の開発案件中23件を地場企業に発注。05年度には118件中89件を依頼した。開発案件の75.4%、金額にして46.3%を地場企業に発注したことになる。このわずか数年で長崎県は“脱おんぶにだっこ”を果たしたといえる。

 大手コンピュータメーカーから地場企業への発注変更は容易ではなかった。大手メーカーと同等の開発リソースを持つ地場企業がなかったからだ。長崎県は、開発案件を切り分け、地場企業に小分けして発注する仕組みを整えることで解決した。開発案件が毎年増えている理由の1つはこれだ。

 ただ、大手コンピュータメーカーから地場企業に発注しただけでは、劇的なコスト削減は見込めないし、庁内にノウハウが蓄積できない。根本的な問題は解決しないわけだ。そこで、島村氏は次の策を打つ。OSSの活用と「仕様書は庁内の担当者が書く」という異色の施策を打ち出したのだ。(木村剛士●取材/文)