仕様書は庁内担当者の手で!

ノウハウ蓄積し“丸投げ”脱却

 長崎県が、大手コンピュータメーカーへの「丸投げ体質」からの脱却に成功した要因のひとつとして、「システムの仕様書は庁内担当者が責任をもつ」という意識を浸透させ、着実に実行したことがあげられる。

 政府が「e-Japan」を掲げたのを機に、全国レベルで各自治体は、「電子自治体の構築」「ITによる住民サービスの充実」に動き出した。ただ、その動きで顕在化したのは、各自治体がIT投資のグランドデザインを描けずに、コンピュータメーカーにシステム開発を丸投げする体質だった。自治体には、ITのプロがいないうえに、2-3年で担当者が変わる。システムの企画や運用ノウハウが蓄積しにくいのは当然だ。これが丸投げ体質をつくる元凶になった。

 長崎県は、脱“おんぶにだっこ”戦略を推進し始めた頃から、この点を問題視していた。そこで、民間企業出身の島村秀世・総務部理事(情報政策担当)は、「仕様書は庁内担当者が自分で書く」という指針を打ち出した。民間企業でシステムの仕様書作成に携わっていた経験がある島村理事は、決してITの知識が豊富とはいえない庁内の担当者に、仕様書の書き方を教えてきた。島村理事が長崎県にやってきてから約7年、今では庁内のシステム担当者の大半が仕様書を書けるスキルを身につけた。「写真(1)」は、庁内担当者が実際に書いた仕様書である。

 この仕様書をもとに、大手コンピュータメーカーではなく地場のシステム開発会社に開発を依頼する。「写真(2)」は、地場の開発担当者(左)と庁内担当者が仕様書をもとに、開発の打ち合わせを行っている光景だ。長崎県ではこうした状況が頻繁にみられる。

 システム構築の上流工程といえる仕様書を自前でつくることで、開発工程を把握。無駄な投資を抑え、庁内にノウハウも蓄積させる。地場企業に発注できるスキームの確立──仕様書作成の自前化は、さまざまなメリットを長崎県にもたらした。

 ただ、長崎県のコスト削減施策はこれで終わりではない。仕様書作成の自主化とともに島村理事が重要施策として取り組んだのが、オープンソースソフトウェア(OSS)の活用と、満を持して取り組み始めたメインフレームからオープンシステムへの移行だ。

 次回は、OSS活用と今後予定されているメインフレームの撤去によるコスト削減効果と、それに向けた長崎県の挑戦に焦点を当てていく。(木村剛士●取材/文)