次世代Key Projectの曙光

<次世代Key Projectの曙光>27.NTTコムウェア(上)

2007/10/15 20:40

週刊BCN 2007年10月15日vol.1207掲載

直に触れて操作できるUI

 NTTコムウェア(今井郁次社長)は、タンジブル・ユーザー・インターフェース(TUI)を採用した「タンジブル災害総合シミュレータ」を開発した。研究を始めたのは2002年。新しいビジネスのシーズを探すため、注目したのがタンジブルだった。

 TUIとは、マサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボの石井裕教授が提唱するUIの手法で、無形の「情報」に形を与え、直接触れて操作できるようにしたインタフェースのことである。

 NTTコムウェアは02年、MITメディアラボで開催された「デジタルライフ・コンソーシアム」に参画したことが、TUIの研究を始めるきっかけとなった。

 研究開発では新しいことを探し、シーズとしてビジネス化している。「長い目でみて、NGN(次世代ネットワーク)の時代になれば、さまざまなアプリケーションが登場する。そんななかで、人が効率的にシステムを活用するため、UIを改善していく必要があった」(基盤技術本部の成田篤信・研究開発部担当課長)。スタッフがMITメディアラボに3年ほど常駐し、石井教授の意見を聞きながら研究を進めていった。

 スタートは、同社のビジネス領域に応用したソリューションとして、「Tangible IP NW Designer」を開発した。IPネットワークの「設計」「運用監視」などを、技術者と技術的知識のないユーザーが「センステーブル」というTUIプラットフォームに映像を投影し、センステーブルにパック(駒)を配置しながら、共同でシミュレーションできるというものだ。

 ハードウェアは製造していないため、センステーブルは1から開発したという。販売できるテーブルをつくるため、「当初はパックが今の倍は大きく、パックの位置検出ができなかった」(成田氏)などの苦労があったという。

 04年には、システム構築や上流のコンサルを手がけている関係から、「Tangible Business Process Analyzer」を開発した。ユーザーの業務のボトルネックを見つけ、効率化させるためのを、センステーブルとパックを活用してプロセスの検討を行う。

 これまでは業務分野に応用したソリューションを発表してきたが、「タンジブルでは複数のパックをテーブル上に置くことができる。複雑な動きと、さまざまな要素が絡み合うような面的な広がりがほしかった」ことから、05年、防災分野のソリューション「タンジブル防災シミュレータ」を開発することとなった。(鍋島蓉子●取材/文)
  • 1