2007年、国内のIT業界は市場の変化に対応した企業の大型合併が相次いだ。とはいえ景気回復を受けた企業の情報化投資は堅調で、まずまずの一年だったといえるのではないだろうか。一方、世界的に目を転じると、後世に21世紀初頭の重要な歴史的転換点と位置づけられる変動の年であったように思う。

 米国発のサブプライムローン問題、そしていよいよ抜き差しならない問題として認識され始めた温暖化による地球生態系の危機。いずれも20世紀後半をけん引してきた成長パラダイムの限界が明らかになった点では共通している。

 サブプライム問題は、シティバンクやメリル・リンチ、欧州大手のUBSが早々に損失計上と資本増強策を打ち出したこともあって、最悪のシナリオを回避する方向に動き出しているように見える。しかし、その影響が一時的な景気後退で収束するのか、それとも世界的な経済破綻に至るのか、現状は予断を許さない。

 確実にいえるのは、強いドルを維持するために編み出されたデリバティブや証券化などの金融技術の矛盾が露呈したことで、米国を中心とした世界経済の枠組みが大きく変わらざるを得ないということだろう。最先端のIT技術と複雑系の数学理論を駆使した金融マジックは、誰かが「王様は裸だ」と叫べば一瞬にして崩壊しかねない崖っぷちにさらされている。サブプライム問題は、実体経済の数十倍というホットマネーで世界を支配してきたアメリカの世紀の終わりを象徴している。

 金融デリバティブが資産の拡大再生産だとすれば、地球温暖化はエネルギーの大量消費に支えられた20世紀型成長パラダイムの終焉を宣告している。どうやら人類は、輝かしい進歩と成長に彩られた20世紀の幕を閉じて、名実ともに21世紀型の世界を構築するための境界に足を踏み入れたようだ。

 新しい世界の枠組みはまだ混沌としているが、必ずしも悲観的なものとは限らないだろう。そしてここでもIT技術が重要な役割を果たすことは間違いない。2000年以降、急速に脚光を浴び始めたシンクライアントやSaaSなどのトレンドは、おぼろげながら新しい社会のあり方そのものを予告しているようにも思える。歴史の歯車は容赦なく人を追いやるが、そこには必ず新しい舞台が用意されている。2008年が日本のIT産業にとって、新しい可能性へのスタートラインとなることを祈りたい。