IT経営コーディネート 企業活性化にITCの妙手

<「IT経営」コーディネート 企業活性化にITCの妙手>48.オオクシ(下)

2008/06/02 20:45

週刊BCN 2008年06月02日vol.1237掲載

決め手は「再来店率」

 理美容業のオオクシが構える店舗は千葉県を中心に10店舗以上。多店舗展開の中核「CUT Only CLUB」には幅広い年齢層の顧客が訪れる。多店舗展開を果たせたのは、IT化による緻密な経営戦略を打ち出したため。現在では、ASP型の経営分析システム「サロン分析システム」を稼働させているが、同システムの導入前は自社でシステムを構築し、その際もITと経営をつなげる独自手法でシステムを有効利用していたのだ。

 「お客さんに適したサービスを提供するためには、スタッフのスキルアップが最も重要。サービス業として、各スタッフのノウハウをいかにシステム化できるかがカギ」とは、大串哲史・オオクシ代表取締役が基本とする考えだ。同社はスタッフの能力向上につなげるため、POSデータ分析システムを活用していた。POSデータの分析といえばCRMとして活用するのが通例で、ダイレクトメールの発送など「プッシュ型」のサービスを提供するのが一般的だ。そのため、年齢や性別、住所などの属性を割り出し、時期に応じて最適な情報を提供することに力を注ぐケースが多い。もちろん、同社でもCRMの観点からPOSデータを活用しているが、「スタッフを成長させる仕掛けが業績を伸ばすことになる」と、ひと味違う方法をとっている。理美容業が顧客満足度を高めるのに必要なサービスは、カットの腕や接客など“人”がポイントとなる。優秀な人材がいるからこそ、顧客はもう一度あの店に行こうと思うのだ。そこで同社では「再来店率」にフォーカスした。評価モデルを構築し、システム活用で再来店率をベースにスタッフを教育している。

 例えば、ある店舗で勤務する美容師が30代前半の女性客を担当し、カットを行った場合。その女性客が再来店すれば、スタッフや店舗が気に入られた証しとなる。再来店がなければ、それを促す策を講じなければならない。悪かった点をあぶり出し、そのスタッフを上手に教育することが最も効果的な方法だ。

 現在導入している「サロン分析システム」では、来店顧客に対して行ったアンケートを分析するシステムもある。「理美容業界は、オーナーや店長の好みでスタッフが評価される傾向が強い。再来店率に焦点をあてたのは、お客さんによるスタッフの評価を重視するから。結果的にその評価が顧客満足度の向上につながる」とみている。また、地域特性に合わせて最適なスタッフのシフトなど人員配置にもつながる。

 「すべてが優れていなくても、何か1つ特徴を持って欲しい」。大串代表取締役がスタッフに願う気持ちだ。スタッフの教育という人ありきのシステム導入が、業績を伸ばしにくいといわれる理美容業界で同社が成長する原動力となっている。(佐相彰彦●取材/文)

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