IT経営コーディネート 企業活性化にITCの妙手

<「IT経営」コーディネート 企業活性化にITCの妙手>53.三田エンジニアリング(下)

2008/07/07 20:45

週刊BCN 2008年07月07日vol.1242掲載

顧客の業務に合ったシステムを

 ビルメンテナンス事業を営む三田エンジニアリングが、7月に本稼働させる基幹業務システム「Mitaengine(ミタエンジン)」(仮称)。全国に点在する9つの営業拠点の売り上げ・受注データを、本社が1つのアプリケーションで一括管理するためのシステムだ。山口航平氏が2年3か月前から携わり、企画から開発・運用までをすべて担った。

 「ミタエンジン」は7月の本稼働に向けて、現在最終テスト段階。ただ、ここにたどりつくまでの道のりは険しかった。当初の計画では開発期間は半年で、1年前の2007年7月にシステムは動くはずだったのだ。

 ビルメンテ業に適したパッケージが見当たらず、開発予算も限られていたことから、一から1人で開発を始めた。三田エンジニアリングの木村正之・取締役技術本部長と小野盛也・技術本部本部長代理とともに、実際にシステムを使う各営業拠点や本社の要望を9か月もかけて吸い上げた。

 三田エンジニアリングにとって基幹業務システム構築は今回が初めて。ITは会社のホームページを開設し、無料のグループウェアを使って情報共有するぐらいで、プロジェクトに携わった木村取締役と小野本部長代理も情報システムの企画・運用がメインの仕事ではない。それだけに、開発前の上流工程には十分時間をかけた。満を持してスタートした開発だった。しかし、そのスケジュールはもろくも崩れることに。

 テスト段階に入った頃、まず処理速度が遅いことがネックになった。データの閲覧・編集に時間がかかり、現場から使いにくいとの苦情が寄せられた。加えて、それまで売り上げ・受注管理で使っていたエクセルと画面表示が異なっており、操作方法が分かりにくいとの声も集まってきた。「現場の業務を理解しているつもりだったが、それとは違う仕事の流れで、アプリが合わなかった。現場を知らなすぎた」と山口氏は振り返る。三田エンジニアリングの木村取締役も「各営業所担当者の要望を十分に吸い上げることができていなかった」と説明する。

 その後、改めて現場の声を収集してシステムを改善。今に至った。木村取締役は「現場が使ってくれるようになり、本稼働は問題ないだろう」と胸をなでおろしている。山口氏は「ITCとして独立する前は、ビル空調設備工事業関連の情報システム部門にいた。それだけに、業務を熟知していると思い、それが過信になったかもしれない」と反省している。

 今後は売り上げ・受注管理だけでなく、請求書の自動発行や作業スケジュール管理機能なども加えてシステムを増強する計画を立てている。「顧客の業務に沿ったシステム作り」を念頭に、システムの強化を図る。
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