日本の情報産業が不調である諸原因を、過去40年間多くの識者があげつらってきた。視点子は、識者と少し違って、「不振の真因は、利用者サイドにある」と主張したい。

 喩えを『日本の食と農 危機の本質』(神門善久、NTT出版)にとろう。同書で、著者は「日本の食と農の問題の本質は、農民と市民の怠慢と無責任である」と喝破している。通説は「悪い官僚vs善良な市民」のような紋切り型のバッシングである。「官僚が食品産業や農協とつるんで既得権益を守ろうとしている」という批判で、一番損をしているのは、実は市民自身であるとする。視点子はこの通説に疑問を呈するものだ。


 システム受託開発を例にとろう。多くの場合、システム開発は大手メーカーとの馴れ合いで、メーカー提案をほとんど受け入れてしまう。旧態依然たる基本ソフトの上に肥大でクローズドなパッケージを載せ、カスタマイズを二次請け、三次請けの下請けに投げる。メーカーは人月計算でしっかりピンはねをする。成果物はほとんどの場合、そこそこ品質である。失敗しても、「××社に開発を依頼して失敗したのだからしかたがない」という情報システム部門長の例の言訳が返って来る。


 キョウビのまっとうな技術開発なら、オープンで秀逸なフリーソフトで、サクサクと稼働する業務システムができるはずだ。メーカーが10億円かかるという代物が、半値八掛けでできる可能性が高い。仕様とプロジェクトを仕切る作業は、中立のプロに有償で発注すればよい。運用期間(ライフサイクル)から考えると、顧客の利得がその生涯で10億円以上になるのはありそうなことだ。


 ここでメーカーの悪口を言っているのではないことに留意されたい。メーカーにしてからが要件定義リスクが減り、プロの要件定義のもとで内作や外作できるメリットがある。顧客は所望の使いやすい業務システムを堪能できる。受託ソフト企業は安心して設計・実装に励める。三方一両得が実現する構図になる。


 この構図を実現できなかった日本的事情が、情報産業不振の中核原因だ、と視点子はみている。その処方は多岐にわたろう。ユーザートップのITへの無知・メーカーとの癒着、システム部門の臆病さ・不勉強など、さらなる分析が必要だ。また、受託ソフト企業には「半値八掛けのシステム提案・設計・実装」をできるだけの見識と技術力が必要でもある。これらの処方についてはまた改めて。