東京進出を機に、三位一体改革

 建物施工時に使う足場などを貸し出す仮設資材リース会社の湘栄産業(原澤武夫社長)は、本拠地の茨城県以外に市場を広げるため、3年前に東京営業所(江東区・北砂)を構えた。同社で取り扱う資材は、足場の資材をはじめ支保工材など約200種類。大きさや用途で分別すれば2000アイテムを超える。「東京進出」は、大手ゼネコンとの取引拡大に寄与した一方、発注、受注、出庫、検収などの作業負担を軽減する必要に迫られる契機ともなった。

 現在のITシステムを導入する以前は、在庫の帳尻が合わないような事態が頻繁に起こっていたと、IT導入で先導役を果たした藤井尚之・リース事業部長は述懐する。「足場材を100個貸し出したとすると、返却時には98個しか返ってこないとか、逆に貸し出し数より増えているケースもあった」。景気が順調な時代、馴染みの地元建設会社との取引なら許容範囲だった。しかし、取引量が増えるほどに損害額が広がる危険性があるだけでなく、建設会社や再リースの依頼先との信頼関係を壊しかねなかったのだ。

 「返却される資材の数が合わない」「作業効率を上げたい」――。これらの課題の解決策を見い出すために、2年ほど前から「経営コンサルタント」として同社に関わっていたITコーディネータ(ITC)の野澤周永氏(Vコンサル東京企業戦略センター長)との二人三脚が始まった。「当初から作業改善のプロセスのなかで『ITはその一つのフェーズ』と考え、まずは広大なヤード(建設資材置場)の再配置(ハード)と業務オペレーションのフロー(ソフト)の全面見直しを同時並行で実施した」と野澤氏。ITの再構築作業は、全体の作業フロー改善と密接に関連づけ、いまも動いている。

 現ITシステムに移行する前、湘栄産業では、東芝製の管理パッケージをクライアント/サーバー環境で利用していた。だが、ISDN回線を使ったダイヤルアップ方式だったため、「通信費用がかさむだけでなく『建設業向けのリースシステム』として入れたものの、使い勝手も悪かった」(藤井部長)。このため、東京営業所との連携性を視野に入れて、Webシステムへ移行することを決定。前システムが慣れたUI(ユーザー・インタフェース)だったため、これをベースに作業効率を上げる新システムを構築しようと、地元ITベンダーに発注した。

 新システムは2年前に稼働。だが、バグだらけで、野澤ITCと検討を重ねた結果、県内の別のITベンダーにリニューアルを任せるという曲折を経た。デバッグ(バグ除去)を施し、オリジナルの資材管理システムが1年半前から稼働している。新システムでは、Excelベースの帳票に発注数量を記載してメールで同社へ送ればCSVファイル化して連携でき、自動処理が可能になった。

 こうして「商品ヤード+業務オペレーション+IT」の三位一体改革が実現することとなった。同社の試算によれば、システム導入前後の比較では、作業負担を20%軽減できている。