作業の全体最適化にITを有効活用

 建設用の仮設資材リース会社である湘栄産業(本社・茨城県鉾田市)の同県小美玉市にある資材置場は、野球場2面分の敷地に相当する場所に数千種類の資材が置かれている。県内外の建設会社からは、資材を借りたり、返却するために、毎日20台以上のトラックが出入りする。経営コンサルタントでITコーディネータ(ITC)でもある野澤周永氏(Vコンサル東京企業戦略センター長)は、取引先が敷地内で資材を選んで運び出すまで、あるいは返却して湘栄産業側で検収や破損した資材の修復までの作業を効率化する物理的な部分(動線)に至るまでも改善策を立案して支援している。

 現システムは、「こうした物理的な作業を改善することや、事務作業を効率化する全体像を描く過程で、プラスアルファとして出てきた」(野澤ITC)という。けっして「ITありき」でシステム導入したわけではない。約1200万円で構築したこのシステムの導入以前は、同社指定のExcelベースの発注用伝票に取引先が手書きで記載したものをFAXで受け取るやり方をとっていた。そして、事務担当者がそのFAXを見て科目コードを探してパソコンに打ち込むという、非効率でミスが多発する作業を行っていたのだ。

 「東京進出」で資材の物量が増え、作業量は増すばかり。加えて、3年前に開設した東京営業所などとFAXでやり取りする間には「(発注書の)文字がかすれ読みにくく、数量の間違いが多発した」と、藤井尚之・リース事業部長は、当時の苦労を振り返る。

 FAXでの社内連絡は、湘栄産業内の事務作業を非効率化すること以上に、誤発注など取引上で問題を引き起こす危険性があった。「(東京進出で)物量が増えた分、『再リース』という形で、不足分を他のリース会社に引き受けてもらうことがある」(藤井部長)ことから、再リース先に迷惑が及ぶ。数量などの受け入れ・返却時の検品を厳重に行う大手ゼネコンが取引先の場合、トラブルを繰り返せば「取引停止」になりかねない。

 物理的な部分を含め、取引作業全体を改善するなかで、会社にとって最も重要で喫緊の課題を優先してIT化にこぎつけたわけだ。現在、同社では次なるIT化に向けた取り組みを野澤ITCのアドバイスを受けて検討中だ。藤井部長は、こんなことを考えている。「資材置場にトラックの重さを測る台貫を置き、貸し出し時の重量と返却時の重量で返却ミスをなくす(今年6月導入予定)。また、貸し出し時には、カメラ式タッチパネルを使って軍手でも数量を打てるようにし、戸外で検収作業をできるようにしたい」。物理的な作業領域にもIT機器を導入し、現システムと連携させる構想だ。

 将来的には、Webシステム上から注文を取り、管理システムと連携させることも視野に入れているという。藤井部長は「野澤さんが作成した作業オペレーションの手順書に従い、ITを構想している。ベンダー選定を含め野澤さんへの相談、アドバイスがあってこそできる」と、全幅の信頼を置いている。