「地域活性化に地場ITベンダーの果たす役割」とは何か。創刊1300号を数えた「週刊BCN」では、このテーマを掲げて全国巡回取材を敢行し、47都道府県の有力ベンダーの代表者からナマの声を拾った。最終回となる第4弾をお届けする。 　地域経済格差が広がるなかで、地場の中堅・中小企業を活性化させる“源流”となるのはITであることを確信している。地場ITベンダーが地域活性化で果たすべき役割はますます大きくなっている。はたして各社は、この重要な役割にどう応えているのか──。

大川原 啓玄　社長

　創業した2004年以来、首都圏の大企業、茨城県や日本原子力研究所など公共分野などからの案件を主体に事業展開していた。1年ほど前からは、これら大企業向けのシステム開発ノウハウを生かし、地場企業、とくに中小企業から信頼を得るシステム提案に力を入れている。経営視点だけでなく現場視点の「ITコンサルティング」をベースに、「ホスティング・サービス」などを組み合わせた小規模インフラ、パッケージ・サービスと個別開発を連携させたソフトウェアなどの提供を積極的に展開している。

　地場中小企業には、こうした提案に加えて、使い方を含めた研修などを取捨選択して提供している。中小企業の多くでは、ITをうまく利活用できないばかりか、パソコン操作に戸惑うユーザーが少なくないからだ。

　昨年度（2009年3月期）までは、首都圏中心に売り上げていたが、これからは地場ITベンダーとして、県内の販売比率を50％にしていきたい。システム受注や提案業務から得られる信頼はもとより、ボランティア活動やコミュニティ活動、産学連携など社外活動を通じて当社を知ってもらう。そのうえで、ITを使った業務効率化や生産性の向上、競争力などを顧客が身につけられるよう支援したいと考えている。県内では、地場企業同士が水平方向や垂直方向の両面で、チェーン（サプライチェーンやデマンドチェーン）を構築できる中心的な役割を果たしたい。

　現在は「受託系事業」と呼ぶインフラ構築と運用、ソフト設計・開発と、ASP／SaaSなど「企画系事業」の両面を展開している。サービスインしているものとしては、美容室向け総合顧客管理システム「Venus（ビーナス）」を展開しているところだが、他の業種に向けて20程度のサービスの立ち上げを検討している。また、クラウドコンピューティングや仮想化技術にも注目している。

代表者…大川原哲玄 代表取締役社長 売上高…非公開 利益率…非公開 主要顧客…自治体、原研、首都圏企業、 地場中小企業 ハードとソフトの比率…2：8 県内・県外比率…3：7

　クラウドは「集約型モデル」であり、大企業より中小企業にメリットをもたらす。この際、SIerの支援は欠かせないものになるはずで、当社もその重要なパートナーであり続けたい。