「地域活性化に地場ITベンダーの果たす役割」とは何か。創刊1300号を数えた「週刊BCN」では、このテーマを掲げて全国巡回取材を敢行し、47都道府県の有力ベンダーの代表者からナマの声を拾った。最終回となる第4弾をお届けする。
地域経済格差が広がるなかで、地場の中堅・中小企業を活性化させる“源流”となるのはITであることを確信している。地場ITベンダーが地域活性化で果たすべき役割はますます大きくなっている。はたして各社は、この重要な役割にどう応えているのか──。
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| 宮地正直 社長 |
30年間増収を続けてきた原動力は、ストックビジネスをいち早く手がけてきたことにあると考えている。1967年、地元有力企業や銀行などの出資によって設立した頃は、コンピュータがまだ高価で、共同利用型のセンター業を軸にビジネスを立ち上げた。だが、岐阜県だけの民需は限られているため、設立から10年ほどは売り上げが伸び悩んだ。そこで取り組んだのが、料金の収納代行サービスだ。これが収益基盤となり増収を堅持。2008年10月には株式上場を果たした。
当初はガソリンスタンドなどの収納代行サービスに取り組み、今ではコンビニやネット通販の決済代行など、収納サービス事業を急速に拡大。世界同時不況の影響を強く受けた今年度中間期(09年1~6月期)の売り上げは、SIやソフト開発などは前年同期比5.5%減だったが、収納代行サービスは10.7%増と堅調に伸びた。営業利益ベースでは不況で苦しむお客様からの値下げ要望が強く、両事業とも前年同期を下回ったものの、ストック型ビジネスが業績を支える構図には変わりない。
SIやソフト開発を主体とする情報サービス事業では、全国に先駆けてGoogle Appsの販売パートナーに参加した。フロントオフィス系を中心としたクラウドビジネスに参入している。バックオフィス系については、約2億円を投じてERPパッケージのSAPを自社用に採用。2010年度には本稼働させる予定だ。フロントに顧客の関心が高いGoogle、バックには定評のあるSAPを持ってくることで、クラウドとパッケージを組み合わせたSIビジネスを伸ばしたい。
代表者…宮地正直 社長 売上高…168億円(連結) 利益率…10億円(営業利益) 主要顧客…製造、流通、サービスなど ハードとソフトの比率…8.6% (情報サービス事業のみ) 県内・県外比率…岐阜県内約400人、 東京、名古屋、大阪で約200人体制 |
課題は、コンサルティング力の増強と営業ノウハウの蓄積だ。岐阜県をビジネスのベースとしてきたが、今後は名古屋や関西、首都圏市場への進出にも力を入れていく。クラウド/SaaS時代のアーキテクチャの組み方や、他社と差別化可能なSAPの提案方法など、高めなければならないスキルは多い。Google、SAPともにすでに自社で活用しつつあることから、実際に使い込んだうえで提案ノウハウを蓄積していく。