社員全員のコスト意識を高める

 旭鉄筋の施工現場は、1日あたりおよそ十数か所に及ぶ。プロジェクトごとに現場が異なり、人員のやりくりが収支を大きく左右する。プロジェクト管理の転機になったのが、社員の意識改革だ。吉田誠ITCの指導のもと、プロジェクト単位で収支をグラフ化し、社内に掲示。まずはプロジェクトリーダーの意識を変え、それから社員全員のコストに対する感性を磨いてもらう取り組みである。2005年頃から本格的にスタートさせ、以来、受注環境が厳しいなかでも増益を堅持する原動力の一つとなった。

 プロジェクトの収支の“見える化”によって、リーダー同士の競争意識が促進される。常に変化する複数の現場で、どうしたら無駄のない人員配置が可能なのかを考え、効率化を追求する。同じ頃、井本秀治社長は、現場に出る回数を意識的に減らし、上がってきた日報を分析して、プロジェクトの損益管理に時間をかけるようにした。「私を含めて、社員全員がとにかく職人気質で、以前は仕事さえこなしていれば利益が出ると考えていた。しかし、業界の淘汰が進むなか、勝ち残るには経営力を磨くしかない」(井本社長)と、自ら現場に出たい気持ちを抑えて、経営戦略の立案に力を注いだ。

 この頃になると、さすがに市販の表計算ソフトとネットからダウンロードした原価管理ソフトでは対応できなくなり、原価管理ソフトを個別に開発。吉田ITCの協力のもと、機能を絞り込んだことで価格は50万円ほど。大手ITベンダーに発注したらゼロが一つ多いところだが、吉田ITCは「ITありきではなく、まずは経営者と社員の意識改革のほうが重要」と、あくまでも社内の体制整備に力点を置いた。

吉田ITCが開発を請け負った「実行予算管理システム」。原価管理を徹底することで不採算プロジェクトを排除

 特筆すべき成果は二つ。一つは原価構造を明確に把握したことで、安値受注を避けられるようになった。二つ目は、強みの明確化。過去に受注したプロジェクトの実績を分析した結果、橋梁分野における優位性の高さが目立った。橋梁は他府県への出張が多く、コストがかさむものの、収支管理さえしっかりしていれば競争力を発揮できる分野でもある。建設中の北陸新幹線の陸橋関連の需要の高まりもあり、「今は人手が足りないくらい」と、うれしい悲鳴を上げる。

 旭鉄筋は、2020年に新社屋を建てる夢をもっている。「なにか目標があるといいよね」という、井本社長のアイデアだ。北陸新幹線の工事は特需のようなもの。これまで続けてきた経営改革を実践していくことで、継続的な収益力強化を目指す。設計士に依頼して制作したモダンな新社屋の完成イメージ図は、社内の壁に貼り出してある。将来の安定成長を見据えたビジネスを展開する方針だ。

2020年に建設予定の新社屋。目標を明確化することで士気を高める