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守りの見える化から攻めの市場開拓へ

 精密機器の金属加工部品を製造している共立電機製作所は、生産の「見える化」に向けて設備稼働管理システムを導入、次のステップでICタグ活用の「RFID工程情報収集システム」を構築した。

 工程情報収集システムは、各工程の作業進捗情報をリアルタイムに管理。工程ごとにICタグ内の情報を読み取る非接触型のリーダを設置、ICタグ付き作業指示書で自動的に作業実績の収集が可能だ。岸本良信代表取締役は、「現場の作業員は指示書をリーダに置くだけ。手間をかけずに、さまざまなデータを収集できる」と説明する。

 最大の特徴は、このRFID工程情報収集システムと設備稼働管理システムとの連動だ。設備の稼働状況と現場の作業状況をリアルタイムに収集することで、「いつ、どこで、誰が、何を」作ったかが把握できるほか、収集した情報を通じて生産量や遅延、作業能率、作業日報などを作成することが可能になっている。

 同社は、ITシステムの導入で生産の「見える化」を実現できるようになったわけだが、そもそもIT化を進めることになったのは、「下請業者として強くならなければならない」(岸本代表取締役)との考えからだ。大手メーカーからの国内下請業者への発注は、アジア地域へのシフトなどで減少傾向をたどっている。このような状況下で、受注を増やすためには作業効率の向上だけでなく得意先の満足度を高めなければならない。また、取引先である大手メーカーは下請業者に対して、時には価格や生産量、納期などで無理な要求をしてくるケースもある。そのような場合、下請業者が自社の能力をきちんと把握していなければ、その要求を呑まざるを得ない。「対応するには自社の生産力と管理能力を高めることが重要」(岸本代表取締役)で、しかも取引先の無理な要求に対して「きちんと実状を説明できなければならない」と判断したのだ。

 同社は、石油探査機やジェットエンジン、電子機器など精密機器の金属部品の製造を得意とし、チタン合金やインコネルなどの金属加工に強い企業として知られている。そのため、石油井の探査データの提供を主力事業に据える米シュルンベルジェと契約を結んでおり、このビジネスで売上比率の50%を占めている。国内では、キヤノンなどIT関連メーカーを主要顧客として獲得。米シュルンベルジェとの取引は、他社には真似できない技術力が認められて一定の取引があるものの、国内メーカーからの取引は減少傾向。「高付加価値品は日本、価格勝負の部品は中国を基本に、遠隔地をうまくつなぐ道具がIT」との考えがある。

 今後はITコーディネータの阿部満氏が協力して共立電機製作所に対して守りの「生産の見える化」と攻めの「海外市場を含む市場開拓」をアドバイスする予定。阿部氏の最もアドバイスしたいと思った理由は、「岸本代表取締役の考えに惚れ込んだ」ことである。支援者であるITコーディネータも一人の人間である。人間と人間が信頼しあい、尊敬しあうことがIT経営の成功する原動力になるのだろう。

共立電機製作所は、石油探査機やジェットエンジン、電子機器など精密機器の金属部品の製造を得意とし、チタン合金やインコネルなどの金属加工に強い企業として知られている