岐阜県情報産業協会(GIA)の参加企業は、従来からオフコンやメインフレームの販売を手がけてきたいわゆる古株のITベンダーが多い。受託ソフト開発のビジネス環境は他地域と比べて悪くはないものの、旧態依然のビジネスモデルにとらわれてはいけないと、各社が独自の取り組みを推進している。今回は、GIA会員企業のなかでも、独立系として活躍している2社を紹介しよう。(取材・文/真鍋 武)
収納代行サービスのパイオニア

電算システム
宮地正直
会長兼CEO 電算システムは、岐阜県のIT企業で唯一、東証一部に上場している。2012年度(12年12月期)の売上高は前年比11.1%増の233億6900万円と順調に業績を伸ばしている。好調の理由について、宮地正直会長兼CEOは、「全国でも先進的なITサービスを生み出していることが成功につながっている」と説明する。
同社は、およそ16年前、通販事業者などが商品代金を消費者から回収する際の収納を代行する「コンビニ収納代行サービス」を開始した。現在、コンビニチェーン17社、ゆうちょ銀行と契約を結んでおり、全国の約4万6000店舗でサービスを提供し、年間の取扱件数は1億3000件に及んでいる。IT業界で先陣を切って提供したサービスだけに、先行者利益は大きかった。また、近年、収納代行サービスを提供する競合が増えてきたことを受けて、12年2月に米ウエスタンユニオンやファミリーマートなどと提携を結び、国際送金サービスを開始。銀行口座を開設することなく、送金金額を自由に設定できる国際送金サービスで、日本初の例となっている。宮地会長兼CEOは、「地方ITベンダーは、従来の受託一辺倒のビジネスモデルに固執しているところが多く、いわばコップの内側ばかりをみている状態。そうではなく、コップの外をみて、まだ市場にない新たなサービスを創出しなければいけない。そのためには、自助努力が欠かせない」と警鐘を鳴らす。
さらに電算システムは、ハウジングやホスティング、クラウドサービスなどを提供している大垣市のデータセンター(DC)がフル稼働となっている状況をうけて、今年11月に土岐市に新たなDCを開設する。「ただ、DCは供給過多になりつつあり、競争が激化している。そこで、従来とは異なる発想の“モジュール型DC”を建設して差異化を図る」(宮地会長兼CEO)。モジュール型DCは、堅牢性にすぐれるビル型DCと、省電力性、省スペース性にすぐれるコンテナ型DCの利点を組み合わせてモジュール化し、それを免震基盤上に構築するというもの。需要に合わせてモジュールを段階的に拡張できるという利点がある。ただ、新DCを建設するといっても、そこで従来と同じDCサービスを提供するだけではない。宮地会長兼CEOは、「収納代行サービスなどで収集したデータをこのDCで分析し、新たなサービスを開発することが真の目的」という。電算システムは、他社の追随を許さず、収納代行サービスのパイオニアであり続けるための商材の開発に余念がない。
家具を売るISV

インフォファーム
辻博文社長 岐阜市のISV、インフォファームも、独自商材の提供に熱心だ。同社は、ハード、ソフト、ネットワーク、机やイスを含めたファシリティなど、オフィス環境に必要な商材をワンストップで提供できることを強みとしているが、「リーマン・ショック以降の不況で、地場の民間企業のオフィスに人が増えない状況が続き、案件が減ってきた」(辻博文社長)。そこで、それぞれの分野で商材を拡充し、顧客層を拡大している。
独自開発のソフトウェアでは、CRM/SFAパッケージ「戦略箱」やBIツール「Bird's View」の全国展開に注力している。「戦略箱」は、操作性にすぐれたGUIや、コミュニケーション機能、プッシュ型メッセージ通知機能など、ユーザーに継続して利用してもらうための工夫を凝らしている。そのため、ユーザーの導入後の定着率は9割に及び、業界平均の2割と比べ群を抜いて高い。辻社長は、「大企業を中心に約120社が導入している。今後は中小企業にも拡販したい。販路拡大のために、大塚商会に販売パートナーになっていただいた」と説明する。また、「戦略箱」と「Bird's View」の販売拡大を目的として、2010年には中国に進出し、映福法磨貿易(上海)有限公司を設立した。辻社長は、「当社は、国産ソフトウェアの国際的な普及を目指すMIJS(メイド・イン・ジャパン・ソフトウェア)コンソーシアムにも参加している。商材の売り先は、もはや日本だけではない」と意欲をみせる。
ファシリティでは、12年から自社開発の漆喰ボード「Health Bright」と樹脂コートボード「Fino-Fit」を、小学校や幼稚園の内装向けの家具として提供している。「Health Bright」は、消臭、防カビ/ダニ、ウイルス抗菌などにすぐれ、有害な化学物質を吸着する漆喰を用いたボードだ。「Fino-Fit」は、天然木の一枚板を用いた無塗装のボード。教育現場で、微量の化学物質に神経が過剰反応を示し、めまいや頭痛を引き起こす化学物質過敏症の生徒が増えていることに目をつけた。愛知県を中心に約30校が導入している。今後は、東日本大震災からの復興で建設需要が見込める東北地域を開拓していく予定だ。
辻社長は、「地場の民間企業を相手にする商売には行き詰まりを感じていた。自社商材の拡充と顧客層の拡大は、生き残るためには避けては通れない道だ。新たな挑戦をしたことで、業績も立ち直ってきた」と効用を語る。

次回は、Rubyの先進地域としての地位を確立した島根県のIT産業の動きを紹介する