日本版のグーグルやフェイスブックを育てる
政府がITのイノベーションをけん引する勢力の一つとして期待しているのが、ITベンチャーだ。「日本版のグーグルやフェイスブックを育てたい」とは、IT施策を所管する府省の幹部がよく口にする言葉だが、ITベンチャーを支援する施策パッケージを包括的に展開する方針を明確にしたのも、改定版「世界最先端IT国家創造宣言」のポイントだ。
施策パッケージは、「起業家精神を創発するIT関連施策パッケージ~アントレ×(バイ)ITパッケージ」と名づけられ、2014年10月30日に公表された。具体的な内容をみると、まず、ITベンチャーに対する直接の支援策として、ハンズオン支援や大企業の研究機関とのマッチングを行うほか、研究開発費用の補助、表彰制度やコンテストによるベンチャーキャピタルなどとのマッチング支援を行う。経済産業省や総務省が、2015年度予算の概算要求にこうした事業を盛り込んでいる。
ビジネスアイデア創出の環境整備にも注力
経産省は、世界レベルのITベンチャーを育成するために、米シリコンバレーに起業家を派遣する事業も強化する。さらに、同省と内閣官房は、IT調達の参加要件を見直し、ITベンチャーが国のIT調達に参加できるような制度を実施中だ。必要に応じて、「ITベンチャー調達枠」などの設定も検討する方針だという。
一方で、ITベンチャー育成の前段階として、環境整備のための施策も推進する。まず、国民全体に広く起業家精神を醸成するために、中小企業庁のポータルサイト「ミラサポ」などを通じて、官民両方の起業家支援施策について情報提供・情報交換の場を提供する。また、起業を志すエンジニアなどに新たなビジネスのアイデア創出を促すことを目的に、アイデアソン、ハッカソンなどの事業を官民連携で進めるほか、新しいアイデアとニーズをマッチングする仕組みも構築する。
データ利活用の環境も整える。政府自身や地方自治体のオープンデータ化を進めるとともに、分野横断的なデータ流通プラットフォームを検討する方針だ。(本多和幸)