
東京五輪は日本のITソリューションを世界に発信する絶好のチャンス東京五輪を最先端ITの見本市に
2020年を目標年として、日本のあるべき姿をまとめた「世界最先端IT国家創造宣言」。2013年6月にその内容を閣議決定したわけだが、同年9月、同じく2020年に東京で世紀のビッグイベントが開催されることが決定した。そう、東京五輪である。
当然、世界中から多くの外国人が、東京、そして日本に集うことになる。「おもてなし」を前面に押し出した誘致活動が記憶に新しいが、あらためて日本という国のホスピタリティが問われるわけで、ここにもITの活用は不可欠だ。というよりも、計画ではその時点で日本は「世界最先端IT国家」になっているはずなので、世界に向けて日本の最先端ITソリューションを発信する見本市として活用すべき機会といえるかもしれない。国産ITベンダーは、グローバルビジネス拡大のチャンスとして捉えるべきだろう。創造宣言の改定版も、東京五輪を見据え、最先端ITを利活用した「おもてなし」の提供を重点項目として盛り込んだ。
通信環境整備は喫緊の課題
具体的な事業としては、次世代放送・通信サービスやITS(Intelligent Transport Systems=高度道路交通システム)、無料公衆無線LANなどの通信ネットワークインフラの整備などを挙げている。
このうち、ITサービス利活用の前提となる通信ネットワークインフラの整備は、喫緊の課題だ。観光庁によると、外国人旅行者に、日本を旅行中に困ったことについてアンケートを実施したところ、4割近くの回答者が「無料公衆無線LAN環境が貧弱であること」と答えたという。日本の公衆無線LANは会員限定のサービスが多く、外国人旅行者はなかなか利用できない。総務省は、15年度予算の概算要求で、外国人旅行者や地域住民が情報受発信をスムーズにできるよう、観光拠点、防災拠点への無料公衆無線LANのアクセスポイント設置事業に14億円を要求している。
ただし、例えば通信キャリアが自社のユーザー向けに提供している公衆無線LANサービスであっても、現時点では通信速度が遅く、不評を買っている。実用に耐え得るインフラを整備できなければ「おもてなし」とはいえない。よもや、これから整備する公衆無線LANでそんな問題が起こるとは考えたくないが……。(本多和幸)