1月19日号(vol.1563)のこの連載でレポートした眼鏡型ウェアラブル端末「雰囲気メガネ」が、今年1月に出荷された。クラウドファンディング方式による開発で、今回はこのファンディングに参加した支援者向けの出荷である。一般向けの販売に先立って、まずは開発者らによるコミュニティから寄せられるさまざまな改善要望を製品に反映していくことで、製品としての完成度を高めていくのが狙いだ。
では、雰囲気メガネとは、どんなウェアラブル端末なのか──。メガネフレームの上部内側にカラーLEDライトが埋め込まれていて、スマートフォンの電話やメッセージ、スケジュールのタイマーなどの「通知」機能と連動して点滅するというものだ。

「雰囲気メガネ」の実物 LEDライトの強さはフレーム上部外側の照度センサによって自動的に制御され、暗いところでは光を抑え、直射日光下では明るく発光する。LEDライトは間接照明の原理を応用し、目に直接光が入らない設計にした。また、「ピッ」と耳元で小さく鳴る電子音も備えていることから「光と音を組み合わせて、スマートフォンからどんな種類の通知があったのかがわかる」(雰囲気メガネプロジェクトに参加している三城ホールディングスの河村和典・チーフエバンジェリスト)と話す。
雰囲気メガネの最初の着想は、脳と創造性に関する「ニューロクリアティブ研究会」の活動のなかで情報科学芸術大学院大学の赤松正行教授と出会ったことに始まる。「目は口ほどに物を言う」のことわざがあるように、目の動きはコミュニケーションに重要な役割を果たしていて、雰囲気メガネのプロジェクトでは、その目を補助するメガネの可能性を探るところを出発点としている。結果としてできあがったのは、スマートフォンからの通知を、まるで周囲にとけこむように伝達してくれるメガネであった。
一般的に眼鏡型ウェアラブルといえば、最新鋭の透過型ディスプレイやプリズムを応用した投影機能などが注目されるが、雰囲気メガネは「あくまでも普通のメガネとして日常生活で使えること」(同プロジェクトメンバーの白鳥啓・間チルダ代表)を重視。このためディスプレイの採用は見送り、メガネを通じたコミュニケーションを追求している。LEDライトの光は周囲の人からも見えるが、「例えば、誰かと一緒にいるときにスマートフォンの画面をチラチラと見るより、メガネがそれとなく光るほうが会話の邪魔にならない」(河村チーフエバンジェリスト)。LEDライトの光から、メガネを通じた新しいコミュニケーションのかたちが生まれる。(安藤章司)

雰囲気メガネをかけている三城ホールディングスの河村和典・チーフエバンジェリスト(左)と間チルダの白鳥啓代表