
キヤノンS&S
市村聡
係長 中小企業のマイナンバー(社会保障・税番号)制度への対応は、主に特定個人情報であるマイナンバーをしっかり管理できるIT環境の整備にある。ITベンダーにとっての課題は、今年10月に番号通知が始まるという限られた時間のなかで、いかに素早くユーザーの番号管理の環境整備を支援できるかにある。
具体的には、「特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン」に沿ったかたちで整備するわけだが、「中小企業ユーザーの場合、実際問題としてガイドラインを厳密に適用するのは難しい」(あるSIer幹部)のが実態である。中小企業ユーザーからみれば、売り上げや利益につながらない規制対応に“大金をはたく価値を見出せない”のが本音だろう。
そこで、求められるのが、手離れがよく、安価で、中小企業ユーザーの実態に合ったマイナンバー対応パッケージ商材である。「これさえ入れればマイナンバー対応はバッチリ」といった切り口だ。中小企業の顧客を多く抱えるSIerは、いま、まさにこうした商品開発に取り組んでいる。ポイントは、マイナンバーの適正管理に焦点を絞ったセキュリティパッケージだ。
キヤノンシステムアンドサポート(キヤノンS&S)は、税別101万7800円でマイナンバー対応が可能な「マイナンバーパック安心PCプラン+」を業界に先駆けて中小企業向けパッケージを投入。NECの指紋と指静脈のハイブリッドでログインするスキャナや、同じくNEC製のキヤノンS&S向けカスタマイズパソコン(5年のハードウェア保守つき)、米フォーティネットのUTM(統合脅威管理)FortiGateアプライアンス製品、ラネクシーの操作ログ管理ソフト「MylogStar(マイログスター)」、米ストレージクラフトのバックアップソフト「ShadowProtect(シャドウプロテクト)」などをパッケージ化した。
この4月から同社「全国約200箇所のサポート拠点のメンバーを総動員して、マイナンバー対応の提案に力を入れている」(キヤノンS&Sの市村聡・ITソリューション企画部ITプロダクト企画課係長)と話す。向こう1年間で500セットの販売を目指すとしているが、しかし、キヤノンS&Sの中小企業ユーザーの母数からみればケタ違いに小さな数字に過ぎない。1社でも多くの同社ユーザーにマイナンバー対応のIT投資をしてもらうには、この約100万円の投資を受け入れてもらえるかどうかの提案力が成否を分ける。(安藤章司)