今、全国で約6500人のITコーディネータ(ITC)が活躍中である。地方のIT産業を活性化したり中小企業のIT化を促進したりする目的で2001年に誕生した資格制度で、有資格者はITと経営の両方の知識をもつ。資格保有者は全国に点在し、各地方のITCたちはコミュニティをつくって、各地方のIT産業の活性化に共同で力を尽くしている。いわば、地方にいる中小企業のIT事情を知るエキスパートだ。各地域のITCは、それぞれの地場IT産業の今をどうみているのか。この連載では、各地方のITCが届けてくれた声、地方の現実を都道府県ごとに紹介する。(構成/畔上文昭)
広島県のITC
児玉 学 氏(広島市)
2001年10月にITC資格を取得。コンサル会社を経営していて、経営コンサルティング全般が業務範囲。NPO法人のITコーディネータ広島の一員でもある。
Q.自身の活動内容は?
A.ITコーディネータの認知度アップや活動の場を拡げるために、所属組織であるITコーディネータ広島を「国の認定支援機関」として登録したり、「広島地域中小企業支援プラットフォーム」に対する同団体の参画を推し進めたりしている。また、ITコーディネータ広島では、地域の各団体と協力しながら、「地域創業促進支援事業・創業スクール」や「IT経営力向上セミナー」などを開講している。
個人的な活動としては、ひろしま産業振興機構内に開設された「広島県よろず支援拠点」のサブコーディネーターを担当。週1回程度の頻度で、同拠点の窓口にて、中小企業・小規模事業者のITに関する相談を受けている。そこでは、ユーザー企業のIT化促進や、ITコーディネータのビジネス機会の創出を心掛けている。
Q.地域のIT産業の景気は?
A.大型の開発案件は東京などの大都市圏に集中し、地方での開発案件は小粒化している印象だ。また、地域密着型の中小企業の間では、ITに対する投資意欲がまだ回復していない。ここ1~2年で、意欲が上向く兆しもみられているが、コスト切り詰めの要求は依然シビアだ。なので、ITビジネス全体の景況は決して芳しいとは言い難い。とはいえ、地方の特性として、「医療・福祉費の肥大化抑止のシステム」など、一部の特徴的な案件は伸びてきている。
Q.地域のIT産業の活性化に必要なことは?
A.ITコーディネータ制度ができてから約15年が経つが、地方におけるITコーディネータの認知度はいっこうに上がらず、かえって、どんどん低下しているように感じる。これは、ITコーディネータ協会が東京にしかなく、地方の現実に対する全体の危機感が足りないからだろう。資格制度の発足当時は効果的だった「届出組織」の増大も、今や「どこが窓口かわからない」というデメリットのほうが大きくなっている。地域IT産業の活性化のためにも、地域における組織の一元化を図り、地方におけるITコーディネータのプレゼンスを高めることが必須だと思う。
神奈川県のITC
松戸宏行 氏(横浜市)
2014年にITC資格を取得。ITコーディネータとして、ユーザー企業、ソフト開発会社へのアドバイスなどを行っている。
Q.自身の活動内容は?
A.ITコーディネータと地元のユーザー企業との接触機会を増やすために、マッチングイベントを開催している。中小企業の経営者がITに関する悩みをITコーディネータに相談する機会を設けることで、ユーザー企業のIT化促進と、ITコーディネータのビジネス機会の創出を手がけている。
Q.地域のIT産業の景気は?
A.中小企業でのIT化の話はあるが、具体的な予算化・案件化になかなかつながらないのが実情だ。
Q.地域のIT産業の活性化に必要なことは?
A.地方の中小企業は、IT化予算の確保が難しいのが現実だ。ITをもっと活用したいと考えていても、ITコーディネータに相談を持ちかける段階には至っていない。そんな会社が、多くあると思う。