日本オラクルは、昨年4月に杉原博茂氏が社長兼CEOに就任すると、2020年までに「No.1クラウドカンパニー」になることを目標に掲げ、その動きは本国の米オラクルにも波及した。ただし、SaaSベンダーの買収にこそ積極的だったものの、総合ITベンダーとしてのポートフォリオを生かしたクラウドサービスの展開をしているわけではなかった。現状では、日本市場はおろか、グローバルでもオラクルがクラウドビジネスのメインプレーヤーとはいい難い。しかし、ここに来て、オラクルがクラウド市場で何をしようとしているのか、具体的な戦略がようやくみえてきた。(本多和幸)

日本のIT業界のリーダーたちを集めたOracle CloudWorld Tokyo 2015
ラリー・エリソン
会長兼CTO 日本オラクルは、4月9日・10日の2日間、都内で「Oracle CloudWorld Tokyo 2015」を開いた。日本オラクルが主催する最大のイベントで、創業者のラリー・エリソン会長兼CTO、マーク・ハードCEOがそろって来日するという力の入れようだった。
さらには、ゲストとして、初日に伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)の菊地哲社長や、NTTデータの岩本敏男社長、NECの遠藤信博社長、富士通の山本正已社長が一斉に登壇し、エリソン会長兼CTOとディスカッションした。日本オラクルの有力パートナーでもある、日本を代表するITベンダーのトップ4人を前にして、エリソン会長兼CTOは非常に上機嫌に見えた。まさに、日本のIT市場に対して、「オラクルは本気でNo.1クラウドカンパニーを目指すのだ」と高らかに宣言するセレモニーだったのだろう。
基調講演でエリソン会長兼CTOが強調したのは、「コンピューティングリソースの提供は、今後公益事業化する」ということだ。「今の世界で自家発電したり、自宅の庭に井戸を掘ったりするのが本当に理に適っているか」と会場に問いかけ、「ITのプロが運営する大規模なインフラをもつクラウドプロバイダのサービスを活用することで、世界は変わる」と主張した。そして、グローバルではすでにローンチ済のPaaS「Oracle Cloud Platform」を日本市場でも正式に提供し始め、年内をめどに国内にデータセンターを開設する方針であることも発表した。
さらに、これを踏まえ、「かつてはIBMやSAPと競合したが、いまや競合はセールスフォース・ドットコム(SFDC)や、アマゾン・ドットコムだ。これは驚くべき変化だ。オンプレミスで一番人気があるデータベースはオラクルDBだが、クラウドでも最も人気がある」とコメントし、オラクルの市場におけるポジショニングの変化を説明するとともに、同社PaaSの競争力の高さに自信をみせた。(つづく)