全国すべての事業者がマイナンバー(社会保障・税番号)制度への何らかの対応を行わなければならない状況下で、顧客数が圧倒的に多い大手コンピュータメーカーは「グループとビジネスパートナーを総動員しての支援体制が求められている」(大手メーカー幹部)と覚悟のほどを明らかにしている。NECと富士通の大手2社をみると、NECは本体とBPO(ビジネスプロセス・アウトソーシング)などを担うNECネクサソリューションズと、富士通は本体と同じく中堅・中小企業の領域を得意とする富士通マーケティングとの二人三脚で、全国のそれぞれのビジネスパートナー(販売特約店)と連携してユーザー企業のマイナンバー制度対応の支援体制を組む。
今号では、まずNECの取り組みをレポートする。絶対的な母数が多い中堅・中小企業の給料分野だけに限る(大手ユーザー企業と金融業の契約者などを除く)と、「運用フロー」と「証跡管理」の二点をNECでは重視する。企業においては源泉徴収票や支払調書、社会保険などにマイナンバーを記入するわけだが、これらを扱う業務システム(財務会計や人事給与ソフトなど)は、中小企業の場合、ほとんど既製品のパッケージソフトを使っているため、通常の制度対応バージョンアップで対処できる。NECグループが開発する各種業務パッケージソフトも「制度に間に合うようバージョンアップをする」(NECの小松正人・番号事業推進本部シニアエキスパート)ため、ユーザー企業側はとくに何かをする必要はない。
問題となるのは個人情報であるマイナンバーの取り扱いや運用に関する部分である。いくら完成度が高いシステムを使っても、運用責任者の運用が適切でなければマイナンバーの漏えい事故は起きかねない。昨年のベネッセコーポレーションの個人情報漏えい事故を例に挙げるまでもなく、いくら大手企業でも運用面での問題は起きやすい。ましてや大手に比べて情報セキュリティ対策が手薄な中小企業は「運用フローこそ重要なポイント」(NECネクサソリューションズの高橋征広・マイナンバー推進室長)と指摘する。このためNECグループでは、さまざまな講習会や啓発パンフレット、小冊子などのコンテンツを揃えて中堅・中小企業向けの運用フロー支援に乗り出している。
とはいえ、マイナンバーはやはり漏えいする可能性がある。例えば転職を繰り返してキャリアアップをする人や、個人事業主で複数の会社と契約を結ぶなどした場合、万が一、自分のマイナンバーが漏れても、どこで漏れたかの特定は難しい。だからこそ企業は、少なくとも自社が漏らしたのではないという証明のため「自己防衛的な証跡管理が強く求められる」(NECネクサソリューションズの河津好雄・マイナンバー推進室グループマネージャー)を指摘する。(つづく)(安藤章司)

左からNECネクサソリューションズの河津好雄グループマネージャー、NECの小松正人シニアエキスパート、NECネクサソリューションズの高橋征広室長