富士通は、中堅・中小企業に強い富士通マーケティング(FJM)などグループ会社と密接に連携して、ユーザー企業のマイナンバー(社会保障・税番号)制度への対応支援に当たっている。とくに影響範囲が広い中堅・中小企業の給料分野を巡って、同社グループが課題として捉えている点は、(1)マイナンバー関連サービスの値頃感、(2)ユーザー企業内における業務フローの見直しや社員教育、(3)非従業員のマイナンバー管理の大きく三点。
マイナンバーは社会保障と税務関連にしか使えないため、一般企業にとってメリットは残念ながらほとんどない。例えばマイナンバーを使って顧客管理をしたり、社員番号の代わりにマイナンバーを使うことはできない。さまざまな制約が課されたマイナンバーを扱うのに、ユーザーはどれだけの予算を用意してくれるのかどうかがITベンダーの大きな関心事である。富士通グループでは、ユーザー企業が安全に効率よくマイナンバーを管理できるように、さまざまなサービスを用意しているが、「サービスの価値を認めてもらえるかが重要なポイントになる」(富士通の木田順啓・番号制度推進室室長)と指摘する。
例えば、マイナンバー管理を代行するBPO(ビジネスプロセス・アウトソーシング)サービスは、従業員数が少なく規模のメリットを生かしにくい中小企業では、「どうしても割高感が表に出てしまう」(富士通マーケティングの古瀬健二・GLOVIA事業本部プロジェクト統括部長兼富士通番号制度推進室)。自社で管理するよりはBPOを活用したほうが安全で、ユーザー企業にとってのリスク軽減に役立つのだが、一方でコストとのバランスが課題になるというわけだ。ユーザーが自社内でマイナンバーを管理しようとすれば、当然(2)の「業務フローの整備が欠かせない」(富士通番号制度推進室担当の友永博一氏)。
また、(3)の非従業員のマイナンバー管理も面倒だ。具体的には「講演を依頼した外部の有識者への謝礼や原稿料、医薬品会社なら治験をしてくれた医師への謝礼、電力や通信会社なら私有地に電信柱を立てたケースでの地権者への賃借料などが想定される。富士通の長谷川峰夫・グローバルHCMサービス推進室室長(兼番号制度推進室)は、「従業員管理はどの会社も比較的しっかりしているのだが、非従業員=外部への支払いは、その企業の担当部門ごとに管理していたり、管理体制が散逸的になりがち」と話す。実際、同社がユーザー企業へのヒアリングを実施したときも、「外部有識者など非従業員部分の例外処理を課題に挙げる声が多かった」(長谷川氏)という。
番号通知が始まる今年10月までに、どこまでサービスの価値を求めてもらえるかが勝負となりそうだ。(つづく)(安藤章司)

左から富士通の友永博一氏、富士通マーケティングの古瀬健二統括部長、富士通の木田順啓室長、長谷川峰夫室長