データベース(DB)ソフトで圧倒的なシェアを誇るオラクルだが、2009年にサン・マイクロシステムズを買収してラインアップに加えたサーバー製品群をはじめ、ハードウェアの大手メーカーでもある。マーク・ハードCEOは、「今期末にはハイエンドサーバーの最大手メーカーはオラクルになると思っている」と、ハードウェア事業も成長していることを強調するが、クラウドビジネスが拡大すれば、ハードウェアのビジネス規模は縮小するのが自然だ。クラウドに大きく舵を切ったオラクルは、ハードウェア領域でどのような戦略を採るのだろうか。(本多和幸)

飯島淳一
執行役員システム事業統括 クラウド時代のハードウェアのミッションはどう変わっていくのか。飯島淳一・執行役員システム事業統括は、「エンドユーザーからみて、そこにどんなプラットフォームがあるのかを意識させないITインフラを目指す。例えば、ソーシャル系のアプリケーションでは、いつどこで大きなアクセススパイクがあるかわからない。ピーク時のトランザクションをさばくことができるサーバーのケイパビリティなどが重要になってくる」と説明する。
つまりは、アプリケーションに最適化され、そのパフォーマンスを妨げないことがハードウェアに求められている重要な要件ということになる。そう考えると、オラクルのITベンダーとしての歴史は大きなメリットになるという。
「通常、ハードウェアのメーカーは、ハードウェアをつくるべくしてプロセッサを設計し、その結果をハコに移して製品化しているというのが、われわれの見方。しかし、オラクルは違う。オラクルはもともとソフトウェア、とくにDBソフトの開発から始まった会社なので、DBが効率的に最大限のパフォーマンスを発揮できるようにするという観点で、ハードウェアにも向き合ってきた。ソフトウェアのテクノロジーの深さと、ハードウェアのテクノロジーの深さの両方を併せもち、それをハードウェアの設計に反映できるのは、われわれだけの強みと考えている」。
DBのパフォーマンス最適化に重きを置いた垂直統合製品のエクサデータは、まさにそうした思想を反映した製品といえそうだが、最新のSPARCプロセッサの開発にも、この強みは生かされているという。年内には、ソフトウェア機能を直接プロセッサに組み込む「ソフトウェア・イン・シリコン」という設計手法を採用した「SPARC M7」プロセッサを市場に投入する。飯島執行役員は、「ソフトウェアのDBのアーキテクトと、ハードウェアのアーキテクトの両者が手を携えて、開発を進めてきた。サン・マイクロシステムズの買収から5年を経て、ようやくオラクルの思想を実際の製品に反映できたという意味で、今年はシンボリックな年になる」と、手応えを感じている様子だ。