オラクルは、コア商材のデータベース・ソフトウェアはもちろん、サーバーやストレージなどのハードウェアからERPパッケージまで、エンタープライズ向けの基幹系システムを構成する幅広い商材を提供してきた。クラウドビジネスでも、「インフラからアプリケーションまで、フルスタックの商材を提供できることは大きなメリットになる」(マーク・ハードCEO)としているが、とくにアプリケーションのレイヤでは、既存の資産を生かすというより、クラウド時代ならではの新たな商材をM&Aなどで積極的にラインアップに加える動きが加速している。(本多和幸)

日本オラクル
杉原博茂
社長兼CEO クラウド時代の新しい商材として、とくにオラクルが注力姿勢を鮮明にしているのが、デジタルマーケティングソリューションの「オラクル・マーケティング・クラウド」だ。日本オラクルの杉原博茂・社長兼CEOは、「あらゆることがアナログからデジタルに急速に移行し、どんどんビッグデータ化している。これをITユーザーのビジネスに生かせるようなソリューションが市場で求められており、オラクルはそのためのSaaS商材を拡充している。その代表的な領域がマーケティングであり、過去数年でこの領域の商材をもつITベンダーを7社買収した。こうしてラインアップに加えたデジタルマーケティング商材を、オラクル・マーケティング・クラウドとして一つのソリューションにまとめた」と説明する。
なぜ、マーケティング領域のソリューションに注力するのか。それはずばり、ユーザーの“財布の在処”が移動する可能性が高いとみているからだ。杉原社長兼CEOは、「米ガートナーは、2017年に至るまでに、CIOが使うお金よりも、CMOが使うIT投資のほうが大きくなるとしている。実際にマーケティングの業務の現場では、グローバルで8割の企業がROIを定量化できていないという課題も浮き彫りになっているので、デジタルマーケティングソリューションには、非常に大きなニーズが期待できる」としている。
デジタルマーケティング市場の有望性を物語る動きとして、IBMやセールスフォース・ドットコム、マイクロソフト、アドビ システムズといった大手グローバルベンダーも、近年、製品ラインアップの拡充と営業活動を強化している。さらに、マルケトなどの新興ベンダーも、デジタルマーケティングソリューションの有力ベンダーとして存在感を高めている。こうした競合ベンダーからも、「大手企業のマーケティング予算は平均してIT予算の2倍以上はある。欧米では、マーケッターの半数以上が全マーケティング予算の3割をITに注ぎ込んでいるという調査結果もある」と、潜在的な市場規模の大きさに期待を寄せる声が上がっている。
次号では、オラクルが競合に対してどのように優位性を発揮して、この新しい商材の市場を開拓しようとしているのかをレポートする。